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大学概要

学長メッセージ

平成22年度卒業式式辞

平成23年3月15日 新潟医療福祉大学学長 山本正治

先週の金曜日、日本で観測史上最大の地震が東北と関東地域を襲いました。その後壊滅的な被害が明らかになり、私は多くの犠牲者と被災者のことを思い、悲痛な気持ちでおります。今日参列された皆様の中にも関係者で被災された方がおられるのではないかと心配しております。犠牲者は万人単位と予想される中での卒業式と大学院の修了式であります。犠牲者のことを常に心に留めながら、式辞を述べさせていただきます。

今回卒業される方々は、学部では8学科601名です。特に義肢装具自立支援学科で今回最初の卒業生をお送りできることを学長として大変うれしく思っています。大学院では25名が修了しました。学部と大学院合わせて総勢626名となります。

今回卒業又は修了されたご本人はもとより、親御さんを始めとするご家族の方々も、今日のこの良き日を待ちに待っていたこととお察します。心からお祝いを申し上げます。またご列席いただきましたご来賓の方々に、学長として心からのお礼を申し上げます。本学教職員の方々は、今日の良き日に至るまで色々なご苦労があったとお察しします。皆様のご尽力によって、626名の方々が今日の良き日を迎えることができました。学長として心からのお礼を申し上げます。

本学は平成13年に保健医療福祉スポーツ分野の人材育成を目指して開設されました。皆様は開設10年目の卒業生になります。この機会に本学の開設時の基本理念を再確認させていただきます。基本理念として1.QOLを支える人材を育成する大学、2.地域社会のニーズに応える大学、3.国際社会に貢献する大学の3項目を上げています。学部卒業生は優れたQOLサポーターとなるための基礎的知識と技術を、大学院ではその各論を習得したことになります。従って皆様はこれから、地域社会さらには国際社会で、今までに学んだ知識と技術を活かすことになります。本学の基本理念の2番目と3番目は、皆様の地域社会や国際社会での活動に対して、大学は惜しみない支援を皆様に約束しております。

ところで皆様は大学卒業又は大学院修了の資格を取得しました。文部科学省の視点から、このことはどのような意味を持つのでしょうか。文部科学省は、大学卒業の要件として学士力を身につけることを要求しています。自分が所属する学科の専門知識と技術、コミュニケーション力、論理的思考力、問題解決力などです。文部科学省は平成21年度から学習指導要領を「ゆとり」から「生きる力」に変更しましたが、学士力は、生きる力の大学版に当たります。

本学では、この生きる力に加えて、国家資格や民間で行われている資格を学生に取得させることを原則としています。日本古来の生活の知恵である"手に職をつける"ことの現代版と言えます。そこで私は、生きる力の大学版である学士力に、手に職をつけることを加えて、「生き抜く力」と定義したいと思っています。皆様はいま「生き抜く力」を得て大学を卒業したことになります。大学院の修了者はさらに高度の「生き抜く力」を得たことは勿論であります。

しかし、これからの人生には色々な予期せぬことが待ち受けています。私の場合も色々ありました。私が大学生の時、全国で吹き荒れた大学紛争のため、今日のような卒業式の晴れやかなスタート台に立てなかったことでした。3か月遅れてひっそり卒業した時のことが今でも目に浮かびます。また最近のことでは、私の趣味に過ぎないフルートですが、大勢の方が聴いている演奏会で、緊張のあまり口の中が乾燥し途中から音が出なくなり、ステージで立ち往生したことがあります。ピアノ伴奏だけが空虚に鳴り響く時の私の切ない気持ちを、容易に察していただけると思います。他にも多くの困難を経験しておりますが、私は自分の人生の67年間を、困難に負けることなく力強く生き抜いてきました。人生の先輩として皆様にお伝えしたい言葉があります。それは、健やかな時も病める時も、順境な時も逆境の時も、いつもプラス思考で困難に対処する勇気が必要なことです。特に病める時、逆境の時こそ必要です。"二歩後退しても三歩前進する勇気"が大事です。

私が最近体験した「プラス思考」のエピソードを紹介します。私にとって今から半世紀前の少年時代の思い出ですが、『ロビンソン・クルーソー漂流記』を小学校の図書室で見つけ、ワクワク・ドキドキしながら読んだ記憶が残っています。それからロビンソンのことは全く意識することなく40年経たある日、ロビンソン・クルーソー島が南米の細長い国・チリにあること、ロビンソンのモデルがアレクサンダー・セルカークであることを知りました。その後、私はクルーソー島探検の思い止みがたく、最近ついに決行してしまいました。島へは首都サンチアゴから小型機で2時間、集落には小船でさらに2時間かかります。伊豆大島の半分の大きさで、約700名が住んでおりました。居住跡と見張り台まで辿り着き、セルカークの思いに浸ることができました。

小説の中のロビンソンはバランスシートのように不幸と幸せを書き出し、いつもプラス思考で行動しております。孤島に漂着し、救出される見込みなし。これに対して他の者は遭難したのに自分だけは助かったことに感謝したこと。着るものもなく惨めである。これに対して船が浜辺近くで座礁したので必要なものを運び出すことができ、これだけあれば当分の間大丈夫と感じたこと。ロビンソンが28年間も無人島で、精神を病むことなく過ごせた理由はプラス思考にあったのではないでしょうか。

作者デフォーは、1760年代に始まるイギリス産業革命直前の激動する変化を乗り切るためのヒントをこの小説に込めたようです。日本は現在 "百年に一度の不況"に見舞われています。これからの激動する時代を乗り切るためにも、ロビンソンのようなプラス思考が必要と感じております。このエピソードを心の何処かに留めておいていただき、病める時や逆境の時に思い出していただければ幸いです。

最後に、皆様は今日、新潟医療福祉大学を巣立ち、明日から大きな希望を抱いて社会に羽ばたくことになります。しかし現実の社会は大学にいる時とは違います。社会に出るにあたり皆様に必要なことは、一歩前へ踏み出す勇気です。大学時代に獲得した「生き抜く力」が皆様を支えます。QOLサポーターとして専門職の枠だけでなく、多くの人たちとの連携、交流、助け合いを行い、これからの地域社会や国際社会に貢献して下さい。皆様の中で最初の仕事が、地震の被災者の支援となる方もいると思います。本学で学んだことを活かし、これからの人生を、勇気を持って切り開いて行って下さい。皆様の新しい門出の平安を祈って、学長式辞とします。

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