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2016年8月4日

「やせ願望の強い高校生」に関する研究 ~運動部所属生徒の特徴~

稲葉 洋美

健康栄養学科 准教授/管理栄養士

■趣味:スポーツ観戦
■愛読書:一瞬の夏
■座右の銘:片手に好奇心、片手に勇気を!

研究を始めたきっかけ

管理栄養士を目指す学生と接するようになった時、肥満ではない学生から「痩せるには何を食べたらいいですか?」「昨日、食べ放題に行ったから太っちゃった。」と話しかけられることが多いことに気づきました。そのフレーズの中には過剰なやせ願望があり、やせていることがそんなに自己肯定感を高めるのかと違和感を感じました。過剰なやせ願望は競技スポーツをしている生徒にも少なくないことに驚き、そのことがこの研究をはじめたきっかけです。「勝つため」に日々厳しい練習に励むスポーツ選手までがなぜやせたいのか?「健康な身体」であることがどれほど素晴らしく、生涯の生活の質と密接に関係しているかを伝えたいと思っています。

 

研究内容

自ら食べる物を選択する機会が増える高校1年生約800人を対象に6年間にわたり「食と健康」に関する調査を行ってきました。結果、男子よりも女子生徒の方が食意識・食行動・食態度に問題を抱えていて、特に気になったのは過剰なやせ願望を持っている生徒の多さでした。この傾向は男子にはなく、女子生徒の特徴であり、加えて運動部に所属する生徒にも見られました。明らかに自分は「健康である」と思っているにも関わらず、今よりもやせたいと思っている運動部所属の学生を始め、過剰なやせ願望をもっている女子生徒に対してどのようなアプローチが有効であるかを研究しています。

 

今後の展望

「メタボ」という言葉がまたたくまに広まり、内臓肥満を基とした生活習慣病への関心度も一気に高まりました。個人または団体により様々な取り組みが行われています。一方、日本は先進国では珍しく、「やせ(BMI18.5未満)」の割合が高いという問題があります。この問題およびその危険性はまだ広く知られていません。やせ体型の女性から産まれた子どもは将来、生活習慣病にかかるリスクが高いことが分かってきています。皆さんのような思春期を迎えている生徒さんに「やせている」ことよりも「健康」であることが美しいという概念が定着した時、日本の生活習慣病発症率は下がるかもしれません。

 

高校生へのメッセージ

日頃から「やせたい」「太っちゃった」と挨拶のように言っていませんか。自ら「食」を選択する機会が増える高校生が「やせている」ことより「健康である」ことがどんなに素晴らしいことであるか感じてもらえたら嬉しく思います。9月の模擬講義でお会いできるのを楽しみにしています。