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2016年8月4日

「視野障害による読書困難の他覚的機能評価」に関する研究

村田 憲章

視機能科学科 助教/視能訓練士

■趣味:スノーボード
■愛読書:十二国記
■座右の銘:なんとかなるさ!

研究を始めたきっかけ

私は4年生大学を卒業したのち、大学病院で視能訓練士として勤務していました。眼科は角膜、水晶体、硝子体、網膜などの病気や、斜視および弱視など様々な症状に対して検査・訓練を行います。眼科における日常的な検査業務に携わっている中で、視覚に障がいを抱える多くの方に出会いました。中でも緑内障は視野異常が慢性的に進む病気で、 緑内障が進行した患者様の大多数は「文字を読むことが非常につらい。」と視覚の質が低下していることを訴えます。そこで、日常生活における読書困難を他覚的に判断できるような研究を行おうと思いました。

 

研究内容

視線解析装置(アイトラッカー)を用いた読書の研究を行っています。アイトラッカーは角膜(眼表面)の光の反射を捉えることで被験者の視線の動きを記録することができます。読書しているときの視線は流れて動いているように感じますが、実は「視線が止まっている瞬間」と「次の文字に視線が飛ぶ動き」が繰り返されていることが、この装置によって分かります。従来、眼科領域における読書の研究は音読時の解析が主流でしたが、アイトラッカーを使用することで黙読時の視線の動きや読書にかかる時間をより客観的に判断することが可能となります。現在、緑内障性視野障害と黙読の関係性について解析を進めています。

 

今後の展望

眼疾患の多くは、異常があってもそれを自覚することがほとんどありません。緑内障による視野障害は自覚症状があまりない病気として知られており、気が付かないうちに視野異常が進行します。そうならないように早期発見・早期治療をすることが最も重要ですが、視野を回復することが難しく、残された視機能を活かした生活が必要な方も多くいらっしゃいます。私は、視野異常の程度と読書困難の関係性を研究することで、Quality of Vision Life(視覚生活の質)を維持、向上するための適切な方法や時期を検討しています。この研究を通して「眼のリハビリテーション」の方法を探していきます。

 

高校生へのメッセージ

9月のオープンキャンパスの模擬講義では、読書解析についての研究意義や重要性を、動画を交えて分かりやすく説明します。皆さんが「視能訓練士」を志すきっかけになれば嬉しく思います。「視能訓練士」を知っている人も知らない人も、ふるってご参加下さい!