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2016年8月4日

「医療技術安全管理学」に関する研究

長濱 大輔

臨床技術学科 教授/臨床検査技師、細胞検査士、 国際細胞検査士

■趣味:写真撮影
■愛読書:泉 鏡花、谷崎 潤一郎の小説
■座右の銘:一期一会

研究を始めたきっかけ

毎日のようにマスコミでは、昔では考えられなかったような命を落とす事件が報告されていますが、私はいつも生命の大切さを多くの人に知っていただきたいと思っています。1999年、自身には経験のない「患者取り違え事件」の報を知った時から、医療過誤の実態について興味を持ちました。まずは、私の専門としていた臨床検査における医療安全について、具体的にどのようなインシデント(事故などが発生するおそれのある事態)があるのかを調査しました。これが新しい研究に取り掛った第一歩です。それは大学病院在職時の第一線を退いた頃で、今から10年前に遡ります。

 

研究内容

高度医療の時代になっても、患者さんには何よりも安全な医療を提供することが大切です。それを担うのがメディカルスタッフです。ところが診療の現場(臨床)では、患者さんからの苦情、患者検体の取り違え、検査結果誤報告、採血ミス、調剤ミス、投与量過誤、薬剤注射器の取り違え、口頭指示の取り違え、与薬・注射・点滴忘れ、単位の取り違いなど、多くのインシデントが報告されています。これらのインシデントを集め、原因を解析し、それらの是正や予防に努めることが医療安全管理学であり、私は特に検体検査(血液や細胞の検査)、生体検査(心電図や超音波などの検査)の精密さや正確さをどう保つのかについて研究しています。

 

今後の展望

採血後に血液をそのまま放置すると、ブドウ糖は代謝により低値に、赤血球内のKイオンは膜を通過して赤血球外へ出て高値になります。尿を室温に放置すれば、細菌が繁殖してブドウ糖を消費し、尿素を分解してアンモニアが生成されます。ですから、検体(採取された血液や尿)の保存状態は検査結果に大きく影響します。多くの診療所で採取された検体は検査センターに送られて検査が行われますが、この送られている間の保存状態が問題なのです。この保存状態に関する研究をして、将来は国際的にも通用する保存方法を確立しようと努力しています。精度保証された正確な検査データは、患者さんの診断、治療、経過観察、治療後の見通しの判定に大切で、より良い診療を行う上で必要不可欠です。

 

高校生へのメッセージ

9月のオープンキャンパスでは、日本で最初に始められた医療技術安全管理学の内容を、生じた事象を例にして、分かりやすく解説します。是非、ご参加ください。お待ちしています。