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母体の栄養状態が卵子の成熟能に与える影響

川上 心也

健康栄養学科 講師/家畜人工授精師

■趣味:料理、散歩
■愛読書:夏目漱石
■座右の銘:人間万事塞翁が馬

研究を始めたきっかけ

学生時代から、哺乳動物の卵子についての研究を行っていましたが、初めから卵子に興味があったわけではありませんでした。研究テーマを決めようとしていた際、さまざまな処理の影響できれいな青紫色に染まった卵子を観察する機会があり、その時の卵子の美しさに魅せられました。思い返せば、この「見た目がきれい!」というだけの動機で始めた研究でしたが、わずか100μm前後(1µm=1000分の1mm)程の大きさの卵子から得られる知見が、生殖補助医療や畜産分野の発展に大きく寄与していることに気づかされ、現在も卵子を扱った研究に取り組んでいます。

 

研究内容

受精卵は、受精後に細胞分裂(発生)が進みますが、受精直前の発育(成熟)した卵子には、発生段階で必要とされるエネルギーや材料が豊富に備わっています。また、排卵前の卵子は、成熟する過程でその直径が他の体細胞に比べ極端に大きくなります。このような卵子の成熟の完了には、適切な母体の栄養状態が重要であると近年明らかになってきました。そこで、母体の栄養状態が卵子の成熟に与える影響のメカニズムを解明するために、主として卵子の形態的変化や成熟能、および卵子内の各種遺伝子発現の変化などを調べています。

 

今後の展望

現在、母体が過栄養または低栄養状態の時に誕生した子は、将来的な疾患(メタボリックシンドロームなど)のリスクが上昇するとも言われており、妊娠前後の母体の適切な栄養管理は重要と考えられます。母体の栄養状態と卵子の成熟との間のメカニズムが解明されれば、母体の栄養条件が悪くとも、子の疾患リスクを低下させるための処方の開発に繋がります。また、ヒトの生殖補助医療分野においても、卵子のより適切な体外培養技術の開発や、より高い妊娠率を獲得するための栄養指導・栄養療法の開発が可能になるかもしれません。

 

高校生へのメッセージ

心身の健康のために「食」は重要ですが、もしかすると皆さん自身が受精卵として誕生する以前から、「食」による影響を受けているかもしれません。この講義をきっかけに、さらに皆さんが食と栄養への興味を深めてもらえれば嬉しいです。

 

 

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