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【大学院・理学療法学科】大学院修士課程1年の大塚遼平さんの研究論文がNeuroscience letterに掲載決定しました。

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大学院修士課程1年の大塚遼平さんの研究論文がNeuroscience letterに掲載決定しました。
研究は卒業研究(神経生理Lab大西研究室)で行った内容で、現在は修士課程(運動生理Lab、椿研究室)に在籍し、神戸市立医療センター中央市民病院のレジデントとして臨床業務に励んでいます。

以下に研究の内容を少し紹介します。

反復的な他動運動による皮質脊髄路の興奮性は皮質レベルで起きていることを解明

研究内容の概要:
反復的な他動運動後に皮質脊髄路興奮性が変化することが報告されています。しかし、60分間の手関節他動運動後に皮質脊髄路興奮性は上昇するとの報告(Mace, 2008)と、10分間の示指内外転他動運動後に皮質脊髄路興奮性は低下するといった報告(Miyaguchi, 2013, 2016; Sasaki, 2017)があり、未だ一定の見解が得られていません。また、他動運動には運動の頻度・速度・時間や関節角度などいくつかのパラメーターが存在しますが、どのパラメーターが運動後の皮質脊髄路興奮性変動に影響を与えているのかはまだ不明です。そのため、本研究では運動の「時間」と「速度」を統一し、関節角度の違う反復的他動運動が皮質脊髄路興奮性に与える影響を明らかにすることを目的としました。本研究成果は『Neuroscience Letters』に掲載されました。

研究者からのコメント:
本研究から反復的他動運動後の皮質脊髄路興奮性変化は他動運動中の関節運動角度に依存しないこと、反復的他動運動後の皮質脊髄路興奮性変化が、脊髄レベルではなく皮質レベルで起こっていることが明らかになりました。

図1 他動運動介入時の関節角度
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/20170824-1.pdf (32.3KB)

本研究では4つの介入条件を用いて行いました。
①外転15°から内転15°の外転内転位条件(abd-add),②外転15°から中間位の外転中間位条件(abd-mid)
③中間位から内転15°の中間内転位条件(mid-add),④内転15°から内転30°の内転内転位条件(add-add)。

図2 反復的他動運動前後のMEP振幅値の経時的変化
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/20170824-2.pdf (55.6KB)

a)abd-add条件、b)abd-mid条件、c)mid-add条件、d)add-add-条件

それぞれの介入条件で皮質脊髄路興奮性変化を評価ツールである運動誘発電位(Motor Evoked Potentials; MEP)振幅値を前後比較し、皮質脊髄路興奮性変化を評価しました。その結果、abd-add条件、abd-mid条件では介入前(Pre)と比較し介入後5分(Post5)でMEP振幅値の有意な低下を認めました。mid-add条件ではPreと比較し介入直後(Post0)、Post5で有意な低下を認めました。add-add-条件ではPreと比較し介入後10分(Post10)で有意な低下を認めました。このことから反復的他動運動後は関節角度に関わらず皮質脊髄路興奮性が低下することが示唆されました。(*はPreと比較して有意差がある場所を示しています。)

表1 反復的他動運動前後のF波出現頻度、F/Mmmax、Mmax振幅値の経時的変化
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/20170824-3.pdf (46.7KB)

反復的他動運動後の皮質脊髄路興奮性変化に脊髄レベルでの変化が影響を与えているかを明らかにするために脊髄運動ニューロンの評価ツールであるF波出現頻度、F/Mmmax、Mmax振幅値を前後比較し脊髄レベルの変化を評価しました。その結果F波出現頻度、F/Mmmax、Mmax振幅値においてはどの条件においても反復的他動運動前後で有意な変化は認められませんでした。このことから反復的他動運動後に生じる皮質脊髄路には脊髄レベルでの興奮性変化は影響していないことが示唆されました。

>>大学院の詳細はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/grad/

>>理学療法学科の詳細はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/pt/

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