スマートフォンサイトを見る

大学概要

学長メッセージ

平成22年度入学式式辞

平成22年4月7日 新潟医療福祉大学学長 山本正治

新潟の大地に、いのちが躍動する春がめぐって来ました。特に今年は、冬が厳しかっただけに、待ちに待った春の訪れに、喜びを感じます。春を迎えた今日ここに、ご来賓、保護者、教職員の皆様のご臨席のもと、新潟医療福祉大学の入学式を挙行できますことは、この上もない慶びであります。本日、4学部9学科の入学生761名を迎えることになりました。新入生の皆様、入学おめでとうございます。大学を代表して、皆様のご入学を心から歓迎します。また保護者の皆様は、今日のよき日を心待ちにして来られたと思いますが、同時に、肩の荷が下りて、ホッとされているのではないかと、お察しします。お子様の入学を、心からお祝い申し上げます。

今回ご入学の皆様は、開学10年目の節目の年の入学であります。この機会に、本学の開学の時のお話をします。今から9年前の平成13年4月、本学は地域社会の医療・保健・福祉の向上に寄与し、地域住民の期待に応える大学として開学しました。当時は2学部5学科の編成でしたが、10年目にして4学部9学科の大学になりました。特に今年の入学生の中には、この4月に開設された医療経営管理学部・医療情報管理学科の103名がおられます。開学10年目にして、在学生は今回入学された皆様を含めて総勢2700名に達しました。

開学10年という節目の年に当たり、ここで改めて建学の精神について触れることにします。建学の精神は「優れたQOLサポーターの育成」であります。新入生の皆様も本学を志願された時に、QOLサポーターという言葉を、大学のホームページやパンフレットなどで目にしたことがあると思います。この目標を掲げた理由ですが、日本の平均寿命が世界一になったことと関係があります。日本の人々は、保健・医療・福祉の目覚しい進歩のおかげで、世界で一番長生きできることになりました。しかしこれからのテーマはただ単に長生きするだけでなく、いかにより良く生きるかが問題となって来ました。お年寄りの方々は病気がちですが、病気になってもいかに病気とうまく付き合っていくかが大事になります。また治療や介護を受けた時には、本人だけでなくご家族の方々にも、その治療や介護に対して満足感を持っていただくことが大事になります。

「より良く生きること」を英語では、クオリティー・オブ・ライフ、その頭文字をとってQOLと言っています。日本語では「生命の質」、「生活の質」と訳されていますが、私は先ほど申し上げた「より良い生き方」、又はもっと具体的に「満たされた生き方」と訳した方が分かりやすいと思います。諸君には将来、お年寄りだけでなく、全ての国民の方々のQOLを、保健・医療・福祉の面で、専門的に支えるサポーターになってもらいたいと期待しています。

ところで私はこの4月に学長となりました。皆様の入学と時を同じくするフレッシュマンであります。昨年3月まで、新潟大学医学部におりましたが、退職の直前に思いもかけないことが私の身に起りました。それは健康診断で大腸がんが発見されたことでした。がんと診断された時のショックは、想像を絶するものがありました。しばらく落ち込みましたが、気を取り直して、開腹手術を受ける決断をしました。私はいままで、医学部学生に教育を行う立場だったのですが、自分が患者の身になって初めて、日本の医療の現場を、治療を受ける立場から体験しました。日本の医療の問題を批判するのは簡単ですが、私は世界の色々な国を旅行し、世界の医療の実態を知っていますので、日本の医療が世界の中で、いかに素晴らしいかを、逆に再認識をしました。平均寿命が世界一になったことも、その証であります。治療法や治療薬の進歩は勿論ですが、私が最も感激したことは、患者である私を取り巻く医療スタッフの素晴らしさでした。特に手術後、ベッドに横たわる私は不安ばかりが湧いて来ました。その訴えを真剣に聞いていただき、そして専門的知識と懇切丁寧な説明で、不安をやわらげていただき、心が満たされた入院生活を送ることができました。

私は退院後、健康を回復して本学に参りました。そして本学の建学の精神「優れたQOLサポーターの育成」が、私の入院で感じたことと、全く一致していました。そこで入学した皆様には、私が体験したように、患者さんのサポーターにぜひなっていただきたいと思います。さらには保健・医療・福祉・スポーツの分野で、全ての国民のQOLを支えるサポーターになっていただきたいと思います。

そのために、本学に入学された学生は、大学時代に何を学ぶべきか、この1年間真剣に考え抜きました。その結果、次の5つのことを学ぶことが、必要であるとの結論に至りました。最初に、専門分野の科学的知識と技術を身に付けることです。最も重要な必要条件です。2番目に、患者さんを始めとする対象者と話し合いができること、特に話し合いは挨拶に始まりますので、どこでも誰とでも、挨拶することを大事です。3番目に、対象者に対して思いやりの気持ちを持つこと。4番目に、いろいろな専門職の方々とチームワークができること。そしてできればリーダーシップを発揮できることです。そして最後に、対象者の抱える問題を解決できることです。このような条件は、患者さんだけに限りません。皆様が、将来働くあらゆる分野で共通する基本的なことと思います。

私たちは「めんどうみのよい大学」として、入学から卒業まで、さらには卒業したあとも、皆様が、とことん、これら五つの力を身につけることができるよう、誠心誠意、支援したいと考えています。皆様はこれから始まる大学生活を楽しみながらも、充実した学びの日々を送っていただきたいと思います。将来優れたQOLサポーターとなるために、大学時代に何をすべきか、皆様のよく知っている言葉で締めくくります。それは「よく学びよく遊べ」です。「よく遊びよく学べ」のように、逆であってはいけません。入学のこのよき日にあたり、昔からの生活の知恵とも言える「よく学びよく遊べ」の意味をかみ締めていただき、式辞とします。

このページのトップへ