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大学概要

学長メッセージ

平成28年度卒業式式辞

平成29年3月14日 新潟医療福祉大学学長 山本正治

春の訪れを感ずる季節になりました。そして全ての生きとし生けるものが活動を始めました。この早春の良き日に卒業式・大学院修了式を挙行できることを大変嬉しく思います。新潟医療福祉大学から社会に向けて羽ばたく卒業生は4学部10学科で856名、大学院では修士課程の41名と博士後期課程の9名です。総勢906名となります。卒業おめでとうございます。保護者の皆さまは今日の良き日を待っておられたことと存じます。ご子息・ご令嬢のご卒業をお祝い申し上げます。
ご来賓の皆さま、ご臨席賜りありがとうございます。また本学の教職員の方々には、卒業を迎えた学生諸君の入学から今日に至るまで何かと面倒を見て頂きましたことに、学長として心からお礼を申し上げます。

さて、ここに立つ私は、昨年暮れに新潟県糸魚川市の大火で被災された方々に思いを馳せながら話しています。この大火で新潟県内最古の蔵元である加賀の井酒造も被災されました。加賀の井酒造は360年前の創業で、加賀の藩主がこの地に立ち寄った際に献上されたお酒を非常に気に入り、加賀の名前を用いることを許されたのだそうです。被災された第18代蔵元の小林大祐さんは現在の心境を次のように吐露しています。
「下を向いても未来は来ない。この場所でまた酒を造りたい」とテレビでお話されていたのが印象的でした。また弟の久洋さんは「兄を助けるため勤めていた会社を辞め、協力しようとしていた矢先の火災であった」と無念を滲ませておりました。私はご兄弟の発したこの言葉に感銘を受けました。

このエピソードから私は、心理学の「自己成就的予言(self-fulfilling prophecy)」を思い出しました。この用語の意味を私なりに説明しますと、不運に見舞われた時にこれからはきっとうまくいくと思い込むと、自分が描いた通りにうまくいくことを意味します。 先ほどの「下を向いても未来は来ない。この場所でまた酒を造りたい」という言葉は、正に自己成就的予言ではないでしょうか。弟さんもまた、お兄さんと同じ心境と思います。幸いにも2月末から富山県黒部市内の酒造の一角を借りて、生産を再開しました。ぜひお二人とも前向きに自分が描いた未来に向けて頑張って頂きたいと願っています。

これから社会に巣立つ皆さんの人生においても、幸運な時もあれば不運の時もあると思います。私の経験からしても、長い人生で不運に見舞われることは避けられません。しかしその時、どう感じどう対処するかは、皆さんの心の持ち方次第です。
ここで役立つのが「自己成就的予言」です。この予言がなぜ成就するかの“種明かし”をします。自分がこうなりたいという予言は、自分が意識するかしないかに関わらず、自分の信念に基づいて発せられる言葉であるからです。心の底から強く思ったその予言に沿った行動をとることにより、事態は予言の方向に動いて行き、その結果として予言が成就するのです。この仕組みが分かれば、対処の仕方は簡単です。幸運な時も不運な時も一喜一憂することなく、自分の置かれている今、この時を思う存分生き、なりたい自分の姿を強くイメージすることです。そうすれば自分の未来さえも変えることができるのです。人生の先輩の言葉として、心の片隅に置いていただければ幸いです。

糸魚川大火で被災された新潟最古の蔵元を守る兄弟の願いが叶うことをここで祈るとともに、彼らの熱い気持ちが皆さんにも伝わるよう願っています。卒業される皆さんは、これから色んなことに遭遇すると思われます。将来、人生の来し方を顧み、行く末を決断する際に、「自己成就的予言」が役立つと確信しています。皆さんの旅立ちの時に当たり、餞(はなむけ)の言葉とします。本日はご卒業、誠におめでとうございます。

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