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大学概要

学長メッセージ

平成30年度入学式式辞

平成30年4月5日 新潟医療福祉大学学長 山本正治

新潟医療福祉大学に入学された皆さん、入学おめでとうございます。学長として心から歓迎します。今回入学された方は1,192名です。学部生は1,146名です。今年度は医療技術学部診療放射線学科の一期生90名が新たに加わりました。大学院生は46名ですが、修士課程が34名、博士後期課程が12名となります。本日の入学式には保護者の方々も参加されておられます。ご子息・ご令嬢の入学、その喜びはいかばかりかとお察しします。ご来賓の方々をお迎えしております。ご臨席を賜りありがとうございます。

本日は入学された皆さんに取り組んでもらいたいことについて、漫画『君たちはどう生きるか』を取り上げお話します。この漫画は昨年8月に発売されましたが、アニメ映画監督の宮崎駿(はやお)さんが映画化すると宣言したことで注目を浴びています。漫画のタイトルは1937年に、吉野源三郎が書いた小説『君たちはどう生きるか』と同一です。

あらすじを紹介します。主人公はコペル君ですが、天動説と真逆の地動説を唱えたコペルニクスに由来するあだ名です。15歳の旧制中学の学生ですが、学校や家で色々な体験をします。そこで生じた問題を自分なりに考え、自分なりに解決を試みます。その後、叔父さんから助言を頂きます。その助言をもとにコペル君はさらに考え、知識と経験を積んでいく物語です。今の言葉に置き換えれば、課題解決型学習(Problem Based Learning, PBL)を用いて様々な問題を解決する物語です。

今日は入学式ですので、原作者の吉野源三郎が皆さんに何を伝えたかったのか探ってみます。私はあるエピソードから作者の思いはコペル君の心の中に凝縮しているとの仮説を立てました。コペル君は赤ちゃんの時に飲んだ粉ミルクの空き缶を発見して、その缶はオーストラリアから輸入されたものであることを知りました。粉ミルクがオーストラリアから日本へ、さらに自分の口に入るまでに多くの人々が関わっていることが分かりました。そしてこの世の中はたくさんの人たちで、生産者から消費者をつなぐネットワークが形成されていることに気づきました。そこでコペル君は「人間分子の関係、網目の法則」と名づけ、叔父さんに報告しました。叔父さんは「人間って、ほんとうに分子みたいなものだね。一人一人の人間はみんな、広いこの世の中の一分子なのだ。みんなが集まって世の中を作っているのだし、みんな世の中の波に動かされて生きているのだ」と説明しました。コペル君は、自分を中心とした世界観から、世界の中で自分を位置づける考え方を学びました。

この考え方は今も変わっていません。むしろ今の方がより重要な考え方になっています。80年前に比べ価値観が多様化しました。さらに1995年を境にインターネットが普及したため、コペル君が言う“網目”は、人と人とのつながりが見えづらくなり、情報だけが行きかうネットワークに変わってしまいました。真実と偽りが混在し、私たちは何を信じてよいのか分からない時代を生きています。そこで私たちは真実の情報を知った上で、自分自身を客観的に見つめ直し、自分らしく生きることが益々重要となってきています。

吉野源三郎が本書を執筆したのは38歳の時でした。それから80年後、74歳の私が読んだ感想を紹介しました。作者が伝えたかったことを私なりにまとめます。①自分を中心とした考え方から脱却し、自分はこの広い世界の中のたった一人にすぎないと、自分を位置づけることです。いわゆる“コペルニクス的転回”をすることです。②新しい立ち位置で、自分自身を客観的に見つめ直し、そして自分らしく生きることです。

作者は巻末で「君たちは、どう生きるか」と問いかけています。「自分らしい生き方を自分自身で見つけなさい」と暗に言っているように思います。そこで皆さんは入学後、作者の問いかけに答えてください。課題解決型学習法を入学後に学びますので、これを用いて、本学で「自分らしい生き方」を見つける準備をしてください。大学院入学の皆さんは、この学習法を既に学んでいますので、入学後直ちに「自分らしい生き方」を見つける作業に入って頂きたいと願っています。私たち教職員一同、今日入学された皆さん全員に対して惜しみない支援をすることをお約束します。

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