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【臨床技術学科】池上喜久夫講師の研究論文が米国誌『Diagnostic Cytopathology』に掲載されました。

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臨床技術学科 池上喜久夫講師の研究論文が米国誌『Diagnostic Cytopathology』に掲載されました。
この研究は、閉経後の女性の体を守る機能について、顕微鏡観察に基づいて形態的に明らかにする研究です。


研究成果:
子宮頸頸部の細胞を顕微鏡下に観察すると、年齢が上がるにつれてマクロファージの出現割合が高くなることが、形態的に明らかになりました。

研究内容の概要:
膣には、デーデルライン桿菌という乳酸菌族の細菌叢があります。この細菌叢は乳酸を分泌し、膣内を酸性に保ちます。雑菌は酸性下では繁殖することができません。デーデルライン桿菌は、女性に不快な症状をもたらす膣炎から体を守る働きをしています。腸内における、「腸内フローラ」と同様な役割を果たしています。しかし、閉経すると、このデーデルライン桿菌が極端に減少します。
女性の体は、月経周期によって、エストロゲンやプロステロンというホルモンを分泌します。女性特有のこれらのホルモンは、膣の細胞にグリコーゲンをため込む働きをします。これが、デーデルライン桿菌の栄養の供給源となります。その為、閉経後はデーデル桿菌が増殖できなくなります。その結果、雑菌が増殖し炎症を起こしやすくなると考えられています。しかし、これまでの研究結果から、閉経後の女性が炎症を起こしやすいのは確かですが、若年者と比べて、それほど多いわけではありません。
本研究は、閉経後の膣を炎症から防御してしている細胞があるのではない方という仮説のもとにスタートしました。そこで、子宮頸がん検診で、異常なし(ClassⅠ)とされた症例を顕微鏡で丹念に観察し、50歳以上の人にマクロファージが多くの割合で見つかること、そして、マクロファージがない症例では、雑菌が繁殖している割合が高いこと形態的に明らかになりました。

池上先生のコメント:
これまで、マクロファージは細菌感染時に、炎症を誘導すると考えられていました。今回の研究で、炎症を誘導するだけではなく、膣内で組織の修復や雑菌の排除に向かうマクロファージがある可能が示唆されました。しかし、それを明らかにするためには、マクロファージの分類と炎症との関係をさらに検討しなければなりません。
今回の研究結果がもたらしたのは、大きな疑問の山です。これからも、この研究は継続していく必要があると考えています。

原著論文情報
The apparition macrophage and Döderlein bacillus is negatively correlated in class I Papanicolaou smear: A morphological examination

>>臨床技術学科の詳細はこちら
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/mt/



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