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【健康スポーツ学科】五十嵐小雪さんらの研究論文が国際誌に掲載されました!

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五十嵐小雪さん(大学院健康スポーツ学分野2年)らの研究論文が国際誌Brain Sciencesに掲載されました!




【研究内容と成果】
本研究では、女性対象者の月経周期を把握し、卵胞期群・排卵期群・黄体期群の3群に分けて実験を行いました。
各対象者は、決められた月経周期に、視覚追従課題(図1)の学習を実施し、その上達の程度から運動学習能力を評価しました。
また、同様の学習を翌日および1週間後に行いました。
視覚追従課題は、親指と人差し指のつまむ力を調節する課題です。
専用の器具を2つの指でつまむと、モニター画面上に赤い線が現れます。
その線を、モニター画面の左から右へ波打って移動する黒いターゲット線に合わせるように力を調節します。
赤い線が、黒い線とどの程度ズレているかで運動技能を評価しました。
一次運動野の活動については、頭皮上に電極を貼付することで脳活動を計測できる脳波計を用いて記録しました(図2)
その結果、黄体期に学習した人は、排卵期に学習した人に比べて、運動学習能力が低いことが分かりました(図3a)
翌日と1週間後に同様の学習を行った場合でも、黄体期に学習した人でズレが大きく、運動学習能力が低いことが分かりました(図3b)
このことから、月経周期によって運動学習能力が変わることが分かりました。
つまり、高いパフォーマンスを獲得するには、運動学習を開始するタイミングが重要であると言えます。
また、黄体期に学習した人は、安静状態での一次運動野の活動が異常に活動していることが分かり(図3c)、このことが、運動学習能力を低下させる要因である可能性が考えられます。さらに、PMSの症状が大きい人ほど、運動学習能力が低いという関係が見られたことから(図3d)、PMSも運動学習能力に影響することが分かりました。
これらの結果から、「月経周期によって運動学習能力が変化する」、特に、黄体期に運動学習を開始すると、一次運動野が過剰に活動していることやPMSの症状によって運動学習能力が低下することが明らかとなりました。
本研究結果の概要を図4に示しました。

>>図1.視覚追従課題
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2011041.pdf (77.4KB)
専用器具(写真右上)を親指と人差し指でつまむと、赤い線が画面上に表示されます。
赤い線は、力を入れると上に移動し、力を弱めると下に移動します。
つまむ力を調節して、画面左から移動していく黒いターゲット線に赤い線を合わせていきます。合計で100回行い、黒い線と赤い線のズレを評価しました。

図2.脳波の計測法
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2011042.pdf (49.3KB)

図3.本研究の結果
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2011043.pdf (48.9KB)
a, b)黄体期に学習した人(青線)は、排卵期に学習した人(赤線)と比べて、運動学習能力が低いことが分かりました。
1週間後に同様の課題を行っても、黄体期に学習した人は、運動学習能力が低いことが分かりました。
c)黄体期に学習した人は、安静状態での一次運動野の活動が、過剰に活動していました。
d)PMSと運動学習能力の関係性をみると、PMSの症状が大きい人ほど、運動学習能力が低下しました。

図4.本研究結果の概要
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2011044.pdf (62.5KB)


【掲載論文】
題目:Menstrual Cycle Modulates Motor Learning and Memory Consolidation in Humans.
(月経周期は運動学習と記憶強化を変調する)
著者名:Koyuki Ikarashi, Daisuke Sato, Kaho Iguchi, Yasuhiro Baba, Koya Yamashiro.
掲載雑誌:Brain Sciences 2020;10(10):E696. doi: 10.3390/brainsci10100696..
URL: https://www.mdpi.com/2076-3425/10/10/696


>>研究成果のポイント、研究の背景、今後の展開についての詳細はこちら
https://www.nuhw.ac.jp/research/2020/11/post-34.html

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