新旧の技術が融合し、進化と可能性に
満ちている義肢装具の世界とは?
義肢装具自立支援学科/講師/須田 裕紀
Department of Prosthetics & Orthotics and Assistive
Technology/Hironori Suda
3D技術を積極的に導入中!目指すは数値を用いた根拠ある義肢装具製作
患者さん一人ひとりに合わせてつくる義肢装具。
日常生活から人生まで寄り添うものだからこそ、大きなやりがいがある
義肢装具士は患者さん一人ひとりの病気や障害に合わせて義肢や装具をオーダーメイドで製作し、できあがったものを体の機能や形に合わせるのが仕事です。義肢装具は患者さんの治療中はもちろん日常生活でも使われますし、もし障害が残ればその人の一生が終わるまで寄り添っていかなければいけません。製作した義肢装具で患者さんの人生と未来を一緒に作っていく。それがこの仕事の大きな特徴であり、やりがいにもつながっています。だからこそ義肢装具の製作において、患者さんの体の形を採取する“採型”と体に合わせる“適合”はとても重要です。そのため義肢装具士には、医学的な知識に加えて採型と適合を行なう技術が必要になります。これまでその技術は手作業で行なわれるのが主流でした。たとえば足の装具を製作するとなったら、まず患者さんの足を石膏がしみ込んだ包帯で包んで型を取り、そこに石膏を流して足型をつくります。その後骨ばっているところは少しパッドが入るように盛り足そうかとか、柔らかいところは少し力を加えたいから削ろうかとか微調整する。その足したり削ったりする作業が、義肢装具士の経験値で補われていたのです。
義肢装具は3D技術と手作業を融合した、新しい働き方が始まっている領域。
今後は数値化したデータも活かしていきたい!
しかし近年は義肢装具の分野においても3Dスキャナや3Dプリンタが導入され、大きく状況が変わってきています。まず3Dスキャナを使うことで患者さんに触れず、負担をかけることなく体の形状を採ることが可能になりました。スキャンしたデータは、CADソフトを使って修正。このとき形状の修正を数値で表せるようになったのが、非常に大きいです。手作業による技術を数値化し,このデータを蓄積することで、「角度を1度調整するとこれぐらい力が変化するから、今回は2度にしましょう」と根拠を持って提案できるよう研究を重ねているところです。3D技術の強みを活かし、感覚による作業に頼っていた部分を具体的にする点にこの研究の意義や面白さがあると思います。もちろん3D技術を用いた義肢装具も、最後は人の手による微調整が欠かせません。まさに今、従来の手作業とデジタルを融合した新しい義肢装具士に働き方が始まっているところだと言えるでしょう。この醍醐味をぜひ感じていただきたいですね。