咬合強度によって脊髄機能が変調し運動パフォーマンスに変化をもたらすことを明らかにしました! - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2021.04.13

研究者  平林 怜

咬合強度によって脊髄機能が変調し運動パフォーマンスに変化をもたらすことを明らかにしました!

平林怜助教(理学療法学科,スポーツ医科学Lab,運動機能医科学研究所,アスリートサポート研究センター),山田勇輝さん(修士課程1年,理学療法学科17期生,スポーツ医科学Lab),齊藤ありささん(船橋整形外科クリニック,理学療法学科17期生,スポーツ医科学Lab),縄涼平さん(石井クリニック,理学療法学科17期生,スポーツ医科学Lab)らの研究論文が,国際誌『Sports Health』に採択されました.

今回の研究では,咬合強度によって脊髄機能が変調し運動パフォーマンスに変化をもたらすことを明らかにしました.高強度の咬合では関節固定に,低強度の咬合では関節運動に適していることを解明しました.

平林先生.jpg

今回,論文を発表した平林先生

論文.jpg

今回,研究を頑張った縄涼平さん(左),齊藤ありささん(中央),山田勇輝さん,(右)

研究内容の概要

咬合はあらゆる身体活動の場面で行われ,日常生活では咀嚼,精神状態によっても咬合に大きな影響を受けています.噛みしめることで歯根膜の受容体から上肢・体幹・下枝に遠隔促通効果が働くことが知られています.本研究は脊髄機能の変調,関節運動をした際の筋力や筋電図解析を用いて咬合強度によってもたされる効果を検討しました.高強度の咬合は,脊髄の興奮性が増大し,脊髄相反性抑制が消失し,同時収縮指数が高くなることから,関節の固定に特化した運動パフォーマンス(ウエイトリフティング,コンタクトスポーツ,器械体操の吊り輪など)に良い効果をもたらす可能性を明らかにしました.低強度の咬合は,脊髄の興奮性が増大し,脊髄相反性抑制が残存し,同時収縮指数が減少することから,関節運動に特化した運動パフォーマンス(野球,テニスなど)に良い効果をもたらす可能性を明らかにしました.

平林先生からのコメント

平林先生2.jpg

 咬合は大変面白い領域で,噛みしめることで即時的に全身に対して促通効果をもたらし,筋の活性に大きな影響を与えることができます.しかし,スポーツ現場では咬合について何も指導されていないことが現状としてあります.噛みしめは競技特性によって適した咬合強度があると考えます.特に円滑な関節運動を行いたい動作に過剰な咬合は全身の緊張につながり,力みとなり運動パフォーマンス低下を引き起こすと考えています.本研究ではその一助となる知見となりました.

今後の研究としては,咬合は良い効果だけなく悪い影響を与えてしまうこともあります.実は歯が噛み合わさっている時間は,24時間の中でたった17分半といわれています.ほとんどの時間が上下の歯は接触していません.つまり,日常生活で過剰に咬合をすると全身の筋肉が緊張状態となり,腰痛や肩こりや頭痛など身体に様々な悪影響を及ぼします.また,噛み合わせも日常生活から運動と密接な関係があります.今後,咬合度合い,噛み合わせが運動パフォーマンスに及ぼす影響を明らかにして,スポーツ選手の運動パフォーマンスを向上させる一助となるよう研究を進めていきたいと思います.

本研究成果のポイント

論文2.jpg

脊髄相反性抑制のIa相反抑制(CTI 2 ms)とD1抑制(CTI 20 ms)では咬合強度が増加するにつれてsingle(単発刺激)と比較して振幅が増大していることから相反性抑制が減少していることが明らかとなりました.下段の脊髄興奮性は咬合強度が増加するにつれて振幅が増大していることから興奮性が増大していることが明らかとなりました.

図1.jpg

Fig. C:足関節背屈トルク,Fig. F: 筋活動比率(ヒラメ筋/前脛骨筋)

咬合強度の増加に伴い,筋力は増加し,筋活動比率も増加した(過拮抗筋の活動が大きくなった).

 

  

原著論文情報

Hirabayashi R, Edama M, Saito A, Yamada Y, Nawa R, Onishi H. Effects of clenching strength on exercise performance: Verification using spinal function assessments. Sports Health [in press]

リハビリテーション学部 理学療法学科
助教 平林 怜(ひらばやし りょう)

関節運動時に重要な脊髄相反性抑制の機能を改善できれば、関節運動の運動パフォーマンスが向上することに繋がります。現在は、他動運動に着目し、他動運動と脊髄相反性抑制の関係を解明する研究を行っています。これが明らかになれば、上位運動ニューロン障害といった中枢疾患患者、高齢者、アスリートに対するリハビリテーションに応用できる可能性があります。