脳卒中後にみられた意味性失名辞の呼称メカニズムについて解明! - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2021.05.21

研究者 大石 如香

脳卒中後にみられた意味性失名辞の呼称メカニズムについて解明!

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研究内容の概要

脳卒中後におこる失語症では、健忘失語における意味性失名辞の純粋例が少ないことから、そのメカニズムについては十分にわかっていませんでした。今回の研究では、左側頭葉損傷後に健忘失語を呈した2症例を対象に、失名辞の発現メカニズムや病巣との関連について検討しました。その結果、語彙理解障害が語彙選択障害の基盤になっている可能性があり、意味性失名辞の責任病巣として左中下側頭回が重要であることが示唆されました。

本研究成果は、日本音声言語医学会の学術誌「音声言語医学」に掲載され、2021年5月19日に電子ジャーナルJ-STAGE上にて公開されました。

研究者からのコメント

失語症の患者さんには、言いたいことが言えない、物の名前が言えない、といった失名辞(しつめいじ)という症状が生じ、言語コミュニケーション上の大きな障壁となります。自分の想いを相手に伝えることは自分のアイデンティティそのものであり、失語症の患者さんに対する支援は大変重要です。
今回の研究で得られた知見は、意味性失名辞を呈する失語症の訓練法の開発や日常生活における支援に役立つ可能性があります。

本研究成果のポイント

1. 左側頭葉病巣により健忘失語を呈した2症例における意味性失名辞の特徴とメカニズムについて、認知神経心理学的および音声学的検討を行いました。
2. 共有する呼称の特徴として、(1) 失名辞を呈した語に対し、名称を聞いてもその語を認知できない、(2) 語頭音効果により語頭音が一致する別の語が誘発される、(3) 語頭音効果が乏しい、という症状がみられました。
3. 意味性失名辞の責任病巣として左中-下側頭回を中心とした側頭葉が重要であることが示唆されました。

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(大石 & 菅井,音声言語医学, 2021)

原著論文情報

大石如香, 菅井 努. 左側頭葉病変による健忘失語2例における失名辞の検討. 音声言語医学 62(2): 123-
133, 2021, doi: https://doi.org/10.5112/jjlp.62.123

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https://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/st/

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【研究者情報】
リハビリテーション学部 言語聴覚学科
准教授 大石 如香(おおいし ゆか)

脳卒中や交通事故などで脳に損傷を受けると、ことばや記憶などに障害が起こることがあります。その病態を解明し、患者様に実際に活かせるリハビリテーションを研究しています。