筋肉が伸びた位置での片側筋力トレーニングは筋力増加と筋肥大効果が大きく,さらにトレーニングを行ってない側の筋力もupさせることが可能 - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2021.08.31

研究者 佐藤 成

筋肉が伸びた位置での片側筋力トレーニングは筋力増加と筋肥大効果が大きく,さらにトレーニングを行ってない側の筋力もupさせることが可能

佐藤成さん(松村総合病院,理学療法学科15期生,博士後期課程1年,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所),吉田麗玖さん(理学療法学科17期生,修士課程1年,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所),中村雅俊先生(理学療法学科,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所)の研究論文が,国際誌『Frontiers in Physiology』に採択されました!!

 本研究では,筋肉が伸びた位置でのトレーニングと筋肉が縮んだ位置での筋力トレーニングの効果を比較しました.また,今回の研究では片腕のトレーニングを行い,何もしていない反対の腕のトレーニング効果も合わせて測定しました.その結果,筋肉が伸びた位置での筋力トレーニングは筋力増加,筋肥大効果が大きく生じることが分かり,さらにトレーニングを行ってない側の筋力も増加することを示しました.研究の内容は以下をご覧ください.

研究内容の概要

レジスタンストレーニング(筋トレ)は主に筋力増強や筋肥大を目的に行われます.また,筋トレの効果の一つとしてクロスエデュケーションと呼ばれるものがあります.これは,片方の腕や脚で筋トレをするだけで,何もしていないはずの反対側の腕や脚の筋力増強が生じるといった面白い現象であり,例えば,怪我や痛みなどにより筋トレが出来ない状況でも応用が期待されている現象です.

 今回は,筋肉が伸びた位置でのトレーニングと筋肉が縮んだ位置でのトレーニングを週2回,5週間行い,トレーニングした腕の筋力増強および筋肥大効果と,何もしていないはずの反対側の腕のクロスエデュケーション効果を検討しました.

 その結果,筋肉が縮んだ位置でのトレーニングと比較して筋肉が伸びた位置でのトレーニングでは,トレーニングした腕の筋力増強および筋肥大効果が高いことが明らかとなりました.さらに,筋肉が伸びた位置でのトレーニングでは,何もしていないはずの反対側の筋力増強(クロスエデュケーション効果)が生じることが明らかとなりました.つまり,片側の腕の筋トレにおいてトレーニング効果を高めるためには,筋肉が伸びた位置トレーニングを行うことが重要であるが示されました.これらの結果は今後,リハビリテーション現場での応用が期待できます.

佐藤さんからのコメント

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スポーツやリハビリテーションの現場では,筋力増強や筋肥大のために効果的なトレーニング処方が求められます.本研究より,トレーニングした腕の筋力増強および筋肥大効果を高めるためにはトレーニングにおいて,筋肉が伸びた位置で力を抜かないことが必要である可能性が示されました.特に,筋肉が伸びた位置での片側のトレーニングによって何もしていないはずの反対側の筋力増強が生じたことは非常に面白い発見でした.本研究の成果が実際の現場でのトレーニング処方に役立てられれば幸いです.なお,本研究は運動生理学分野で世界的に有名な研究者である,野坂和則先生(Edith Cowan University)にもご指導いただきました!!

研究成果のポイント

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片方の腕で5週間,週2回の筋肉が伸びる関節可動域でのダンベルトレーニングと筋肉が縮む可動域でのダンベルトレーニングを実施しました.その結果,筋肉が伸びる関節可動域でのダンベルトレーニングの方が,トレーニングした腕の筋力増強および筋肥大効果と,何もしていないはずの反対の腕の筋力増強効果が高いことが明らかとなりました.

原著論文情報

Sato S, Yoshida R, Kiyono R, Yahata K, Yasaka K, Nunes P, Nosaka K, and Nakamura M. Elbow joint angles in elbow flexor unilateral resistance exercise training determine its effects on muscle strength and thickness of trained and non-trained arms. Front Physiol. [in press]

佐藤 成(松村総合病院,理学療法学科15期生,博士後期課程1年,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所)
吉田 麗玖(理学療法学科17期生,修士課程1年,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所)
中村 雅俊(理学療法学科,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所)