体性感覚刺激の方法によって、刺激後の運動野興奮性が異なる - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2021.11.30

研究者 小島 翔

体性感覚刺激の方法によって、刺激後の運動野興奮性が異なる

小島翔講師(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所所属)の研究論文が、国際誌『Brain Sciences』に採択されました!!

研究の概要

手などの末梢に対して感覚刺激を行うと,感覚機能を司る領域の脳活動が記録されます.この脳活動の直後に運動を司る領域の活動を記録すると感覚刺激がない条件に比べて,反応が小さくなることが示されています.これは,感覚を司る領域と運動を司る領域の機能連関を示していると報告されています.これまでの研究では,主に1回の電気刺激後に運動を司る領域の反応が小さくなることが報告されていますが,日常生活で多く使われる「触覚」刺激後にも同様の反応が認められるのか,連発刺激後にも同様の反応になるのかなどは明らかになっていません.そのため,本研究では,「電気刺激後」だけでなく,「触覚刺激後」または「連発刺激後」においても同様の反応が認められるのか否かについて検討を行いました.その結果,「触覚刺激後」においても同様の皮質反応が認められた一方,「連発刺激後」の反応は,電気刺激時と触覚刺激時で異なる反応が認められました.よって,「電気刺激」と「触覚刺激」後の運動を司る領域の反応は異なる可能性が示唆されました.

小島先生からのコメント

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脳の中でも,運動を司る領域と感覚を司る領域は密接に関連し合っています.本研究は,その領域間の関連を「感覚刺激方法の違い」および「連発刺激」の観点から詳細に検討した研究になります.今後は,さらにこの領域間の関連について研究を進めていきたいと思います.

本研究成果のポイント

① 19名と対象に2つの実験を行いました.A)実験1では,電気刺激または触覚刺激の刺激方法の違いが大脳皮質の反応に及ぼす影響を検討しました.B)実験2では,電気刺激または触覚刺激の連発刺激後の大脳皮質反応の違いについて検討しました.

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② 実験1の結果,電気刺激および触覚刺激後の皮質反応は同様の傾向を示しました.一方,変化の度合いに関しては,電気刺激後でより大きかったです.

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③ 実験2の結果,連発刺激後の皮質反応は,電気刺激と触覚刺激で異なる反応を示しました.

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原著論文情報

Sho Kojima, Shota Miyaguchi, Hirotake Yokota, Kei Saito, Yasuto Inukai, Naofumi Otsuru, Hideaki Onishi. The Number or Type of Stimuli Used for Somatosensory Stimulation Affected the Modulation of Corticospinal Excitability. Brain Sci. 2021, Volume 11, Issue 11, 1494.

【研究者情報】
リハビリテーション学部 理学療法学科
講師 小島 翔(こじま しょう)

日常生活の中で、我々は様々な刺激を感じながら生活しています。その中でも触覚(触った感覚)はとても重要な感覚の一つです。脳卒中などの疾患患者は触覚機能が低下していることが多く、この触覚機能の低下が運動機能の低下に結びついていると考えられています。しかしながら、その治療法は未だ確立されていません。そこで、我々は様々な触覚刺激(ツルツルやザラザラなど)介入が運動機能および感覚機能に及ぼす影響を明らかにする研究を行っています。