膝関節の衝撃を吸収する組織である膝蓋下脂肪体は重度変形膝では委縮していることを明らかにしました! - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2022.05.19

研究者 江玉 睦明

膝関節の衝撃を吸収する組織である膝蓋下脂肪体は重度変形膝では委縮していることを明らかにしました!

江玉睦明教授(理学療法学科,スポーツ医科学Lab,アスリートサポート研究センター,運動機能医科学研究所)らの研究が国際誌に掲載されました!

研究背景

ヒトの膝関節には「膝蓋下脂肪体」と呼ばれる組織があり、関節に加わる負荷を和らげてくれるクッションの役割をしています。しかし、外傷などで膝関節が腫れたり変形したりすると、痛みの原因にもなる非常に厄介な組織です。この膝蓋下脂肪体の形態は未だ謎に包まれており、さらに関節変形との関係性は十分に検討されていません。
 そこで本実験では、膝蓋下脂肪体の形態と関節変形(膝蓋大腿関節)との関係性を検討しました。その結果、膝蓋下脂肪体は滑膜外、関節包内に位置していました。また、膝蓋下脂肪体は膝蓋腱の深層にある体部だけでなく、膝蓋骨の辺縁部に位置する内側部と外側部が存在し、3つのタイプに分類することができました。更に、関節変形が重度の膝では膝蓋下脂肪体の内側部と外側部が欠損しており、体積も小さいことが明らかとなりました。本研究結果から、関節変形が進むと膝蓋下脂肪体は委縮する可能性が示唆されました。
 本研究結果は、国際誌「Scientific Reports」に掲載予定です。

研究者からのコメント


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 国内での変形性膝関節症患者は、自覚症状(膝痛など)を有する患者数で約1000万人、潜在的な患者数(X線診断による患者数)で約3000万人と推定されており、多くの方が困っている痛みの一つです。今後は、本研究結果を発展させ、膝関節痛の効果的な治療法の開発に繋げていきたいと考えています。

研究成果のポイント

① 膝蓋下脂肪体の形態を明らかにした点。
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② 膝蓋下脂肪体を形態と関節変性(膝蓋骨関節面の変性)との関係を検討した点。
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原著論文情報

Edama M, Otsuki T, Yokota H, Hirabayashi R, Sekine C, Maruyama S, Kageyama I. Morphological characteristics of the infrapatellar fat pad. Scientific Reports. 2022. [In-press].

【研究者情報】
リハビリテーション学部 理学療法学科
教授 江玉 睦明(えだま むつあき)

筋・骨・神経等の運動器系の詳細な構造を3次元的に解明する研究、下肢を中心とした運動器系の機能解剖学的研究、スポーツ障害発症予防とメディカルサポート方法の検討などを研しています。