脳卒中後にみられた表記不能型ジャルゴンのメカニズムについて解明! - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2022.05.24

研究者 大石 如香

脳卒中後にみられた表記不能型ジャルゴンのメカニズムについて解明!

失語症の中で『表記不能型ジャルゴン』は日本語文字での表記が困難な不明瞭な発話です。表記不能型ジャルゴンを呈する患者は広範な病巣を有する重度例が多いため、その発生メカニズムについては十分にわかっていませんでした。今回の研究では、心原性脳梗塞後にみられた失語患者のジャルゴン症状や言語機能に対して認知神経心理学的および神経心理学的検討を行い、表記不能型ジャルゴンの発現メカニズムと責任病巣を明らかにしました。

本研究成果は、日本音声言語医学会の学術誌「音声言語医学」に掲載され、電子ジャーナルJ-STAGE上にて公開されました。

研究者からのコメント

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ジャルゴン症状が急性期に一過性に出現することは必ずしも稀ではありませんが、意識障害や一過性の構音障害に起因しない表記不能型ジャルゴン例の経過を追った詳細な検討は多くはありません。また、表記不能型ジャルゴンを呈する症例では詳細な音韻処理能力の評価が困難でした。今後は本研究結果を発展させ、ジャルゴンに対する訓練法の開発につなげていきたいと考えています。

1. 本例にみられた表記不能型ジャルゴンの成因として発語失行と自己発話のモニタリング障害に加えて重度の音韻構造化の障害が示唆された。

図1.png

2. 本例にみられた言語機能の低下は左中心前回・中心後回・上側頭回皮質および皮質下損傷に起因すると考えられた

図2.png


※失語症:脳梗塞、脳出血などの脳卒中によって脳の言語機能が損傷されることにより、言語機能(「聞く」「話す」「読む」「書く」)が障害された状態
※ジャルゴン:聞き手には理解できない意味不明な発話


原著論文情報


大石如香, 菅井 努,田村俊暁.心原性脳塞栓後に表記不能型ジャルゴンを呈し伝導失語に収束した一例
. 音声言語医学 63(2): 103-114, 2022, doi: https://doi.org/10.5112/jjlp.63.103

リハビリテーション学部 言語聴覚学科 教授 大石 如香
リハビリテーション学部 言語聴覚学科 助教 田村 俊暁