水中と陸上における上肢のパワー発揮能力の関係を明らかにしました! - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2022.07.15

研究者 池田 祐介

水中と陸上における上肢のパワー発揮能力の関係を明らかにしました!

競泳競技に関する研究では、これまで水中における上肢のパワー発揮能力に着目した研究はなく、選手の体力要素、競技レベルとの関係は明らかになっていませんでした。本研究では水中におけるひとかき動作(図1:a)のパフォーマンスと競泳のドライランドトレーニングで用いられるメディシンボールオーバーヘッドスラムのボール速度(図1:b)、ラットプルダウンの筋力(図1:c)との関係を明らかにすることで、競泳選手の体力トレーニング指導に役立つ知見を得ることを目的としました。分析の結果、ひとかきの最大泳速度(図2)は陸上における筋力、パワー発揮能力、競技レベルと有意な正の相関関係(図3)がみられ、競技レベルの高い選手は水中と陸上における上肢のパワー発揮能力が優れていることが明らかになりました。また、オーバーヘッドスラムのリリース時のボール速度は、肩関節と肘関節の角度変位、角速度と密接に関連しており、肘関節の伸展動作によってボール速度を高めるために二関節筋である上腕三頭筋の機能が重要になることが示唆されました。これらの結果から、スタート、ターン後の高い泳速度でひとかき動作によって身体を加速させるためには、肩関節まわりの筋力を強化するとともに、高めた筋力と泳動作を繋ぐドライランドトレーニングが重要になると考えられます。

本研究成果は、国際学術誌「Scientific Journal of Sport and Performance」に受理されました。

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図1.水中と陸上における筋力・パワー測定

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図2.ひとかき動作における水平速度の変化(13名の加算平均)

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図3.ひとかき動作における最大速度とFinaポイント、筋力・パワーとの関係

研究者からのコメント

水中におけるひとかき動作は技術的要素が高いと考えられていましたが、筋力トレーニングやドライランドトレーニングによってパフォーマンスの改善が期待できることがわかりました。今後はトレーニングの負荷を漸増的に高めることでひとかきの動作がどのように変化し、どこが変化しにくいのかを明らかにすることで、効果的な体力トレーニングの開発に繋げていきたいと思います。

原著論文情報

Yusuke Ikeda, Rio Nara, Yasuhiro Baba, Shoichiro Yamashiro, Tetsuya Hisamitsu, Yoshimitsu Shimoyama
Journal: Scientific Journal of Sport and Performance
Title: Relationship between dry-land upper-limb power and underwater stroke power using medicine ball overhead slam as a predictor of swimming speed by upper limbs only

【研究者情報】
健康科学部 健康スポーツ学科
准教授 池田 祐介(いけだ ゆうすけ)

競技現場におけるコーチングに役立つ知見を提供することを目的に、競技動作の動作解析や体力評価に関する研究を行っています。