拍を整える機器を植込んだ患者の手術前のフレイルの存在は再入院を増加させる - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2022.11.16

研究者 武田 智徳

拍を整える機器を植込んだ患者の手術前のフレイルの存在は再入院を増加させる

この度、本学大学院生 武田智徳(たけだとものり/博士後期課程)と椿淳裕教授(つばきあつひろ/理学療法学科、運動生理Lab、運動機能医科学研究所)らの研究グループが、入院前からフレイルがある心臓デバイス植込み患者は手術後1年以内の心不全による再入院が多く、フレイルが再入院の要因であることを明らかにしました。なお、本研究成果は2022年11月に国際誌『PLoS ONE』に掲載されました。
本学では引き続き、保健・医療・福祉・スポーツ分野の発展に貢献する研究と研究成果を広く世界へ発信することに積極的に取り組んでまいります。

研究結果のポイント

1. ペースメーカー、植込み型除細動器、心臓再同期療法という心拍を整える機器(心臓デバイス)を植込んだ患者で手術前に合併症が3個以上ある(フレイル)患者は手術後1年以内の心不全による再入院が増加することを明らかにしました。
2. 心不全による再入院の要因はフレイルが影響していることを明らかにしました。
3. 今回使用したフレイルを判定するための評価方法は手術前から安全に使用でき、リハビリテーションの開始時の再入院リスクを判断する際に使用ができると考えています。

研究内容の概要


ペースメーカー、植込み型除細動器、心臓再同期療法という心臓デバイスは、不整脈を有する高齢者や重症心不全の患者に適応される機器です。また、心不全患者においてフレイルの存在は再入院を増加させると報告されています。しかし、心臓デバイス植込み患者におけるフレイルと再入院の関係についてはわかっていませんでした。本研究では、心臓デバイス植込み患者において手術前のフレイルの有無が手術後1年以内の心不全による再入院に影響を与えるかを調査しました。
本研究グループは、The modified Frailty Indexという電子カルテからの情報でフレイルが判定できる評価方法を使用しました。主に手術前の合併症の数でフレイルかそうでないかを判定します。3個以上当てはまるとフレイルと判定されます。その結果、心臓デバイス植込み患者のうちフレイルの者は手術後1年以内の心不全による再入院が多いことを明らかにしました。また、心不全による再入院の要因はフレイルが影響していることを明らかにしました。
今回使用したフレイルを判定するための評価方法は特別な道具を使用せず、歩行の困難な患者にも手術前から安全に使用できます。また、心臓デバイス手術後のリハビリテーションの開始時の再入院リスクを判断する際に使用ができると考えています。

>>研究の詳細についてはこちら
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0277115

研究者からのコメント


・武田智徳さんからのコメント
心臓デバイスに関するリハビリテーションは、その方の生活を考えると積極的に関与する必要がありますが、それに関連した研究報告は少ない現状にあります。特に身体的なフレイルがある場合には、その改善や軽減に対する関わりが重要です。手術した時点では新たな障害が起きなければ術後1週間程度で退院することが多いのですが、本研究によって再入院しやすい方の特徴を早期に捉えられる可能性を示唆しました。
今後の研究として、心臓デバイス植込み後の腕の活動制限が広く行われていますがそれが本当に必要なのかなど、心臓デバイスのリハビリテーションに関する臨床疑問を解決していきたいと考えています。

・椿淳裕教授からのコメント
生活習慣や高齢の方の増加などを背景に、心臓の働きを補助するデバイスを体内に植え込む必要のある方は少なくありません。フレイルの状態にある方は退院後に再び入院しやすいことは、いくつかの病期を対象とした研究でわかってはいましたが、心臓のデバイスを植え込んだ方に関してのエビデンスは十分ではありませんでした。フレイルの状態にある方が心臓のデバイスを植え込む場合、その後のリハビリテーションの要否を検討する材料になり得る研究と考えます。

原著論文情報


Tomonori Takeda, Atsuhiro Tsubaki, Yoshifumi Ikeda, Ritsushi Kato, Kazuki Hotta, Tatsuro Inoue, Sho Kojima, Risa Kanai, Yoshitaka Terazaki, Ryusei Uchida, Shigeru Makita: The impacts of preoperative frailty on readmission after cardiac implantable electrical device implantation. PLoS ONE 17(11): e0277115.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0277115

武田智徳(たけだとものり/博士後期課程)
椿淳裕教授(つばきあつひろ/理学療法学科、運動生理Lab、運動機能医科学研究所)