【臨床技術学科】横山貴教授らの論文が国際誌に採択! - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2025.02.25

研究者 横山 貴

【臨床技術学科】横山貴教授らの論文が国際誌に採択!

学校法人新潟総合学園新潟医療福祉大学臨床技術学科の横山貴教授、東京女子医科大学腎臓内科の潮雄介助教、眞部俊講師、星野純一教授は、尿沈渣中の結晶を契機として希少疾患であるLight Chain Proximal Tubulopathy (LCPT) を診断した症例を報告しました。解析により、結晶が免疫グロブリン軽鎖に由来することを明らかにし、尿沈渣がLCPTの非侵襲的な診断手法となる可能性を示唆しました。
この報告は2024年5月14日付けでKidney Internationalのnephrology imageに掲載されました。

◆研究概要
尿沈渣は、腎臓を含む尿路由来の細胞などを直接観察することが可能な検査です。光学顕微鏡を用いた目視での尿沈渣分析は自動化技術に置き換えられつつありますが、非典型的な尿沈渣成分を同定し、解析することは腎疾患を含む腎尿路系疾患の診断に有用な可能性があります。
Light Chain Proximal Tubulopathyは免疫グロブリン軽鎖が近位尿細管上皮細胞へ取り込まれ、細胞内外で結晶を形成し、尿細管障害をきたす疾患です。典型的にはファンコニー症候群を発症しますが、腎機能障害のみを呈する症例も知られ、そのような症例では診断に難渋することが知られています。
現在までLCPTの尿沈渣に着目した研究は報告されておらず、我々は尿中の結晶の解析がLCPTの非侵襲的な診断手法となる可能性を検証しました。

◆研究成果のポイント
今回我々は、ファンコニー症候群を伴わない慢性腎臓病患者の尿沈渣中に光学顕微鏡観察で結晶(図1)を同定しました。その由来を臨床的には血中、尿中のモノクローナル蛋白の検索を行いIgG-κモノクローナルタンパク質を検出しました。尿沈渣では、結晶の蛍光抗体法による免疫グロブリン軽鎖(κ鎖、λ鎖)染色(図2)を行い、尿沈渣中の結晶が血中、尿中に存在するモノクローナルなκ鎖に由来していることを示しました。診断の確定のため腎生検を行い、κ鎖によるLCPTに合致する所見でした。


図1 尿沈渣の光学顕微鏡観察。多数の結晶を含む円柱が観察される。

図2 尿沈渣の蛍光抗体法染色。κ鎖のみ陽性であり、モノクローナルな免疫グロブリン軽鎖に由来することが強く示唆される。

以上、今回の報告は、尿沈渣での結晶の同定とその由来の解析がLCPTの診断の契機となり、且つ非侵襲的な診断手法となる可能性を示唆しました。

◆原論文情報
Yusuke Ushio, Takashi Yokoyama, Shun Manabe, Momoko Seki, Yuki Kawaguchi, Shizuka Kobayashi, Shiho Makabe, Hiroshi Seino, Naoko Ito, Hideki Nakayama, Shigeru Horita, Hiroshi Kataoka, Sekiko Taneda, Kazuho Honda and Junichi Hoshino. Urinary casts containing crystals in light chain proximal tubulopathy.
Kidney International (2024) 106, 999; https://doi.org/10.1016/j.kint.2024.05.014

【研究者情報】
医療技術学部 臨床技術学科
教授 横山 貴(よこやま たかし)

非侵襲的に尿中剥離細胞を用いた糸球体上皮細胞および尿細管上皮細胞を検出することによって、糸球体障害と尿細管障害を早期に発見および診断する研究、ライソゾーム病の一つであるファブリー病について、マルベリー細胞を検出することによって障害部位の特定と酵素補充療法の効果判定をする研究、尿路系腫瘍で尿中に剥離した癌細胞に5-アミノレブリン酸を取り込ませ、光線力学的に癌細胞を診断する研究、腹膜透析排液中に剥離した細胞を対象に、白血球分画と中皮細胞の形態学的および機能的変化により腹膜劣化を早期に発見および診断する研究をしています。