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【健康スポーツ学科】佐藤大輔教授らの研究論文が国際誌に掲載されました!

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佐藤大輔教授(健康スポーツ学科、スポーツ生理学Lab、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌Behavioral Brain Research(オランダ)に掲載されました!

研究結果:
上手に泳ぐカギは、水中で自分の身体を知ることだった
~スイマーの優れた身体位置覚とそのメカニズムを解明~

わたしたちの研究グループでは、「人はなぜ泳げるのか?泳げるようになるとはどういうことか?」という疑問を明らかにするため、研究を進めてきました。
そんな中、今回の研究では、泳げる人(水泳選手)は、水の中でも陸上と同じように自分自身の身体の位置を理解できており(身体位置覚)、そのことが「華麗な泳ぎ」を生み出していることが分かりました。

研究成果のポイント(図1):
1.様々な環境で身体位置覚を調べることのできる機器を作成し、スイマーが上手に泳ぐためには、自分の身体位置を正確に掴むことが一つのカギであることを見出しました。
2.スイマーが、水中でも陸上と同じように身体位置を正確に掴むことができる背景には、大脳皮質にある一次運動野の神経抑制機能の強化が関与していることが分かりました。
3.「泳げる人が水中環境でも自身の身体位置を正確に把握できている」という本研究の成果は、学校での水泳教育カリキュラムや水泳選手の育成プログラムに応用可能です。

>>図1はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008261.pdf (27.7KB)

研究内容と成果:
本研究では、水泳選手の華麗に泳げる理由を明らかにするために、陸上環境でも水中環境でも人の身体位置覚(自分自身の身体の位置や動きを察知する感覚)を計測できる特殊な機器を開発し、水泳選手の身体位置覚を評価しました。
特に、泳ぐための推進力を生み出す際に重要となる手関節の位置覚に注目しました。
今回の実験では、まず始めに、対象者に3種類の手関節角度を記憶してもらい、その後、指定された角度にどの程度正確に手首を曲げることができるかを評価しました。(図2)

>>図2はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008262.pdf (57.4KB)

その結果、水泳選手は、水の中でも、陸上環境と同じように自分自身の身体位置を理解していることが分かりました。(図3)

>>図3はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008263.pdf (46.8KB)

また、水泳を専門的に実践した経験のない人(非水泳選手)と比べて、手関節の位置覚が、環境に関わらず(水中でも陸上でも)、優れていました。
つまり、水泳を長きにわたりトレーニングしていくことで、水中という特別な環境においても自分の身体を正確に理解できるようになり、その影響は陸上環境にまで波及する可能性があることが分かりました。
次に、この水泳選手の優れた身体位置覚の理由を探るために、脳の前頭葉にある一次運動野の神経活動を、経頭蓋磁気刺激法という手法を用いて調べました。
一次運動野は、私たちが運動するための指令を出す脳領域で、運動技能の獲得と深い関係があることが知られています。
特に、一次運動野における神経活動の抑制と興奮のバランスが重要であることが分かっています。
今回の実験では、このバランスを評価することのできる2連発経頭蓋磁気刺激法という手法を用いて、水泳選手が水中でも陸上と変わらない身体位置覚を実現できる理由を調べました。(図4)

>>図4はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008264.pdf (33.4KB)

その結果、水泳選手では、水の中に手を浸けると、抑制性の神経活動が高まる一方で、非水泳選手では、抑制性の神経活動が弱まるといった全く逆の反応を示すことが分かりました。(図5)

>>図5はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008265.pdf (27.5KB)

これは、水泳選手が、本来であれば水に入ることで弱まる抑制性の神経活動を、強化させることで、正確な身体位置覚を実現している可能性を示しています。
これらの結果から、水泳選手の華麗な泳ぎには、水の中でも一次運動野の抑制機能を強化し、自分自身の身体の位置を理解することが関係している可能性があります。

>>研究の背景、今後の展開、掲載論文などの詳細についてはこちら
https://www.nuhw.ac.jp/research/2020/08/post-27.html

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