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【看護学科】紅林佑介講師らの研究論文が国際誌「Psychiatria Danubina」に採択されました。

紅林佑介講師ら(看護学部・精神看護学研究室)の研究論文が国際誌「Psychiatria Danubina」に採択されました。

紅林先生は、精神疾患を抱える人の認知機能について研究しています。精神疾患を抱える方の一部には認知機能の低下がみられることがあります。その認知機能は患者さんの予後や社会復帰を左右する一因であることから、認知機能を高められるようにすることが必要です。しかし、精神科治療の一つの柱である薬物療法では、認知機能障害への効果は限定的です。薬物療法に代わる方法で、認知機能を高める援助技法の開発が求められています。
健常者を対象とした近年の研究では、運動で認知機能が高まるとする報告がみられるようになりました。薬物療法ではなく、運動療法によって認知機能を改善させる可能性があります。そこで紅林先生らは精神疾患の患者さんへ応用し、認知機能を高められる運動療法の開発を進め、患者さんの社会復帰の後押しを目指しています。

論文概要:
今回は運動介入によって大うつ病患者さんの血中脳由来神経栄養因子が増えるのか否かを検証するために、これまでにその点を調査した世界で公表されている研究論文564件の中から、基準を満たした5件の論文のデータを統合しmeta-analysisをしました。その結果、大うつ病患者さんの場合、運動介入によって血中の脳由来神経栄養因子は増加も減少もしないことが明らかになりました。
運動介入でうつ病患者さんの認知機能が改善されることは報告されていましたが、そのメカニズムとして脳由来神経栄養因子の関与が想定されていたものの、今回のmeta-analysisの結果から、認知機能の改善のメカニズムとして脳由来神経栄養因子の関与は低い可能性が示唆されました。

紅林先生のコメント:
効果的な運動介入を考えるうえで、運動介入が認知機能を高めるメカニズムを明らかにする必要があります。そのメカニズムが分かれば、その要因をより高めやすい運動の種類や頻度、強度を考えやすくなるからです。
今回の研究では、これまでメカニズムの候補として考えられていた脳由来神経栄養因子の関与は、我々が想定していたよりも低いことが明らかになりました。おそらく大うつ病患者さんの場合は、他のメカニズムが関与しているものと思われます。今後は研究を深めて、そのメカニズムの解明を進めていき、患者さんが早く社会復帰できるための運動療法の開発につなげていきたいです。

原著論文情報
Yusuke Kurebayashi, Junichi Otaki: Does physical exercise increase brain-derived neurotrophic factor in major depressive disorder? A meta-analysis, Psychiatria Danubina, in press.

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https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/nr/

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