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【医療情報管理学科】伊藤嘉高先生の翻訳書が刊行されました!

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医療情報管理学科 伊藤嘉高先生の翻訳書が法政大学出版局より刊行されました。

概要は以下の通りです。

ブリュノ・ラトゥール著、伊藤嘉高訳
『社会的なものを組み直す―アクターネットワーク理論入門』(法政大学出版局、2019年)

主体/客体あるいは人間/自然といった近代的世界認識を超え、脱中心的なネットワークとして社会を記述するアクターネットワーク理論。アーリ、ラッシュら多くの社会学者に影響を及ぼし、技術社会論、情報論、経営学、地理学、人類学、哲学、アートにもインパクトを与えた方法論を、提唱者であるラトゥール自身が解説する。現代の知見をふまえてアップデートされたラトゥール社会学の核心。

伊藤先生からのコメント:
私たちは、自分の意志だけで行為していません。極めて常識的な直観ですよね――「何かに動かされて、動いている」。けれども、ある種の社会学は、「私たちは何かに動かされている」という直観から、階級やイデオロギーといった「社会的なもの」によって動かされているのだと一気に飛躍してしまいます。そうすれば、高所から人びとの振る舞いを簡単に批判できてしまいますが、今日、そうした批判にリアリティを感じられる人はどれだけいるでしょうか。

そうした社会学とは異なり、ラトゥールらのアクターネットワーク理論(ANT)は、人間と非人間(人間以外のもの)との連関のなかに行為を位置づけます。つまり、「アクターネットワーク」とは、アクター(行為者)を取り巻くネットワークを指すものではなく、行為をもたらす力(エージェンシー)のネットワークの結節点としてアクターを位置づけるものなのです。

能動態でも受動態でもない「中動態」をめぐる議論が医療界でも注目を集めています。たとえば、患者さんに対する服薬指導や生活指導、リハビリテーション、さらにはインフォームドコンセントなどにおいて、患者の自立支援が行われていますが、ときとして、仕方なく指導に従っているように見える患者がいて、「本当に患者は、自分の意志で自発的に(能動的に)自己決定していると言えるのだろうか」と悩むこともあれば、あるいは指導に従わない患者について「努力不足だ。意識が足りない」と非難したくなってしまうという事態があります。能動態/受動態という枠組みでとらえている限り、こうした問題は決して解決できません。

いわば、ANTは、こうした「中動態の社会学」とも言えるでしょう。ANTは、医療社会学の方法論としても注目されます。行為を生み出す人間と非人間との連関をどう描き出すのか? それはいかなる意味で「科学」と呼べるのか? そして、そこに「批判の力」はあるのか?

本書は、幅広くの方に読んで頂けるよう、可能な限り平易な訳文を心がけ、「誤読することなくスラスラ読めること(=少なくとも翻訳の稚拙さでつまずかないこと!)」を目指しました。関心のある方は、ぜひご一読ください。

>>医療情報管理学科の詳細はこちら
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/informatics/hi/

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