筋疲労時の生体反応に関する研究

(1)筋疲労課題中における大脳皮質ヘモグロビン濃度変化-NIRS実験-

大脳皮質の活動を計測するための装置には,脳波,脳磁図(MEG),機能的MRI,PET,近赤外線分光イメージング装置(NIRS)などがある.このうち,NIRSは比較的身体拘束が少なく,運動継続時中の脳活動の変動をとらえることができるのが特徴である.頭表から3種類の近赤外線光を照射し,近傍に設置した近赤外線受光プローブで近赤外線光を検出する.これにより大脳皮質の酸素化ヘモグロビンや脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化を検出することができる.
我々はこの装置を利用して,筋収縮継続中の筋活動と発揮張力,大脳皮質酸素化ヘモグロビン変化量を同時に計測し,筋疲労と大脳皮質活動との関係を研究している.図は100%,50%,30%MVC把持課題継続中の把持力・手指屈筋群の筋活動・NIRS信号(Oxy-Hb)の変動を示している.図に示すように,強い強度での筋収縮時には,筋活動が低下しても大脳皮質の活動はしばらく低下せず,弱い強度での筋収縮時には,筋活動が低下する時期と脳活動が低下する時期がほぼ同時であることが明らかとなった(岩部ら,2009).