3/31 勉強会

【研究報告】

担当:山代

タイトル:特異的トレーニングがGo/NoGo電位に与える影響

要旨

  • 背景:先行研究において,指の感覚を頻繁に用いる野球選手は指の感覚をあまり必要としないその他のスポーツ選手(陸上,サッカー,水泳)と比較して,刺激への知覚を反映するとされる長潜時体性感覚誘発電位および単純反応時間が短縮していることが明らかになった.
  • 目的:野球というオープンスキル種目において,野球選手は指刺激に対する単純反応時間のみにとどまらず指の刺激に対する認知や判断も向上すると推察した.そこで,本研究では野球選手とその他のスポーツ選手の指刺激に対するNoGo電位および選択反応時間を比較することを目的とした.
  • 方法:成人男子13名を対象とした.9年以上のプレー経験を有する野球群12名,その他のスポーツ群12名としGo/NoGo課題を実施した.右手の示指と小指に1:3の割合でリング電極を用いて電気刺激を呈示した.示指の刺激には反応せず(NoGo),小指の刺激が呈示された場合に左手の示指でボタン押し(Go)を行った.刺激間隔は0.5 Hzとし,閾値の3倍で刺激を呈示した.記録されたNoGo波形からGo波形を引き算し,NoGo電位を抽出した.解析区間は刺激前100ミリ秒と刺激後500ミリ秒とした.
  • 結果:NoGo電位は野球群およびその他のスポーツ群において,刺激から約200ミリ秒(NoGo-N200)と300ミリ秒(NoGo-P300)後に記録された.野球群の前頭の電極においてNoGo-N200の有意な潜時短縮と振幅増大が認められた.また,選択反応時間も短縮する傾向が認められた.さらに,NoGo-N200の潜時と選択反応時間に有意な正の相関,NoGo-P300の振幅と選択反応時間に有意な負の相関を認めた.
  • 結論:本研究の結果から,野球選手においては指の刺激に対する知覚が早くなるのみならず,抑制系の神経ネットワークが強化され,指刺激への認知・判断も早くなっている可能性が示唆された.

【文献抄読】

担当:宮口

タイトル:Differential Modulation of Corticospinal Excitability by Different Current Densities of Anodal Transcranial Direct Current Stimulation

要旨

  • 目的:電流密度の違いがanodal tDCSの効果に与える影響を明らかにすること
  • 方法:対象は右利き健常成人12名とした.tDCSは陽極_24 cm2を左一次運動野領域,陰極_35 cm2を右前額部に貼付し,10分間施行した.電流密度は,0.013 mA/cm2 ,0.029 mA/cm2 ,0.058 mA/cm2 ,0.083 mA/cm2 の4条件とした.皮質脊髄路の興奮性の評価として,tDCS介入前後のMEPを計測した.
  • 結果:4条件において介入後30分後までMEP振幅の有意な増大が認められた.また,0.029 mA/cm2条件,0.058 mA/cm2条件に比べ,0.083 mA/cm2条件においてMEP振幅の有意な増大が認められた.さらに,0.029 mA/cm2条件に比べ,0.013 mA/cm2条件においてMEP振幅の有意な増大が認められた.tDCSによる被験者の副作用は0.013 mA/cm2条件が最も小さかった.
  • 結論:0.013 mA/cm2条件においても皮質の興奮性が増大したことから,0.013 mA/cm2条件は,副作用を抑えかつ皮質の興奮性を増大することが可能である.tDCSの効果は電流密度とそれに伴う受容体の活動に依存する可能性が示唆された.