11/10 第44回日本臨床神経生理学会予演会

【第44回日本臨床神経生理学会予演会】

担当:桐本

タイトル:一次感覚運動野に対する経頭蓋静磁場刺激が体性感覚誘発電位に及ぼす影響

要旨

  • 目的:一次感覚運動野に対する経頭蓋静磁場刺激(tSMS)は,感覚誘発電位(SEPs)の振幅を低下させるか否かを検証した.
  • 方法:11 名の健常成人被験者の右正中神経に経皮電気刺激を行い,F3及びC3’から導出されたSEPsをtSMS前,終了直後,終了5分後,ならびに終了10分後に記録した.NdFeb永久磁石をC3’及びC3を覆う位置に置き,刺激時間は10分間及び15分間の2種類とした.また15分間のtSMS中,3分間ごとにSEPsを記録する実験も実施した. Sham刺激には非磁性ステンレス製金属を使用した.
  • 結果:tSMSを10分間,または15分間行った直後では,SEPs成分N18(F3),N20(C3’)の振幅がSham刺激後の値と比較して有意に減少した. tSMS中にSEPsを記録した場合,SEPs振幅に変化はなかった.
  • 考察:tSMSにより,一次体性感覚野の興奮性が低下したことが示唆された.tSMS中に行う末梢神経刺激は,皮質の興奮性低下に対して拮抗的に作用したと推察した.

 

担当:松本

タイトル:課題指向型手指運動課題時における同側一次運動野皮質内抑制の減少

要旨

  • 目的:一次運動野(M1)の興奮性の指標である短潜時(SICI)および長潜時皮質内抑制(LICI)を用いて,課題指向型手指運動課題時における運動肢と同側M1の興奮性の変化の有無とそのラテラリティを検証すること.
  • 方法:右利き健常成人12名を対象とした.被験者は,自己ペースの単純タッピングと3種類の課題指向型手指課題(キーパッド上の光るキーを叩打する光刺激追従課題,キーパッドへの疑似単語または実単語の入力課題)を左右示指それぞれで行った.安静時および課題遂行時に動作肢と同側M1への単発または二連発経頭蓋磁気刺激(TMS)を行い,安静肢の第一背側骨間筋から運動誘発電位を記録した.二連発TMSの刺激間隔は3 ms,100 msとし,SICI,LICIをそれぞれ評価した.
  • 結果:安静条件と比較し,利き手での光刺激追従課題遂行時に同側M1内のSICIは有意に減弱した.非利き手での運動時と比較し,利き手での光刺激追従課題,単純タッピング課題遂行時にSICI,LICIがそれぞれ有意に減弱した.
  • 結論:1)手指運動課題時の同側M1におけるSICIおよびLICIの変化は利き手での運動で大きい,2)安静時と比較し,利き手での視覚誘導性運動遂行時に同側M1内のSICIは減弱する,3)手指運動課題時の課題指向性は同側M1におけるLICIの変化に影響を及ぼさない,以上のことが示唆された.

 

担当:高井

タイトル:指タッピング中の脳血流動態に与える同側一次運動野上の経頭蓋直流電流刺激の影響

要旨

  • 目的:経頭蓋直流電流刺激(tDCS)が最大努力指タッピング運動中の刺激対側運動関連領野における脳血流動態に与える影響を検証すること.
  • 方法:健常成人7名に右一次運動野上1mA,20分の3条件tDCS(陽極・陰極・擬似刺激)を行い,前後に同側示指での最大努力タッピング運動を実施した.課題は安静-運動-安静を20秒ずつ3回行うものとした.近赤外分光法により補足運動野,刺激対側運動前野,一次運動野,一次体性感覚野の酸素化ヘモグロビン濃度を計測した.安静時からの変化量のうち運動後半10秒間の平均値を算出し,この値の刺激前後の変化量を領域毎に条件間で比較した.
  • 結果:各領域において,タッピング運動により約0.01~0.015 mM・cmの上昇がみられ,刺激前後の変化量には条件間で有意な差はなかった.
  • 結論:刺激対側の運動関連領野において,タッピング運動による脳血流上昇は,刺激条件間で差がないことが示された.

 

担当:小丹

タイトル:間欠的末梢神経電気刺激が皮質脊髄路興奮性に与える影響

要旨

  • 目的:間欠的末梢神経電気刺激が皮質脊髄路の興奮性に与える影響について明らかにする.
  • 方法:対象は健常成人12名とした.間欠的末梢神経電気刺激による介入は,電気刺激部位;右尺骨神経,刺激周波数; 30 Hz,刺激強度; 運動閾値の110%強度とし,4秒間の通電と6秒間の休息条件で10分間繰り返し行った.電気刺激介入前後に左一次運動野に対して磁気刺激を行い,右第一背側骨格筋より運動誘発電位(MEP)を導出した.磁気刺激強度は安静時運動閾値の120%強度とし,介入前および介入後20分間の経時的なMEP振幅の変化を解析した(実験1).刺激周波数の影響を検討するため,実験1と同様の刺激パターンで,刺激周波数を10Hz,30Hz,100Hzの3条件に設定し,介入前後の単発MEPおよびSICI,ICFを比較した(実験2).100Hz条件では刺激強度の影響を比較するため,運動閾値の90%強度で電気刺激を行い介入前後の単発MEPおよびSICI,ICFを比較した(実験3).
  • 結果:10分間の電気刺激(周波数; 30 Hz,刺激強度; 運動閾値の110%強度,刺激サイクル; 4間通電,6間休息)により,電気刺激後に単発磁気刺激によるMEP振幅は増大し,その増大は9分間持続した.また周波数の比較では,30 Hz条件で単発磁気刺激によるMEP振幅は増大し,二連発磁気刺激におけるSICIの減弱とICFの増大が認められた.しかし,10,100 Hz条件ではMEP振幅に有意な変化は認められなかった.一方,100 Hz条件において運動閾値の90%強度では単発磁気刺激によるMEP振幅が増大した.
  • 結論:本研究より間欠的末梢神経電気刺激の周波数および刺激強度の組み合わせにより皮質脊髄路の興奮性は変化することが明らかとなった.