3/14 勉強会

【研究報告】

担当:山代

タイトル:テーピングが痛覚関連体性感覚誘発電位に及ぼす影響

要旨

  • 目的:テーピングはスポーツ医学において怪我の予防,受傷部位の保護,鎮痛などの目的で広く利用されている.しかしながら,テーピングが侵害刺激によって生じる知覚に影響を与えるかどうかについては明らかにされていない.その理由の一つとして,選択的に侵害受容器のみを刺激することが非常に困難であったことがあげられる.われわれは選択的にAδ線維を刺激できる表皮内電気刺激法(Intra-epidermal electrical stimulation: IES)を用いて痛覚関連体性感覚誘発電位(pain-related somatosensory evoked potentials: pSEPs)に対するテーピングの効果を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:被験者は男性8名とし,pSEPsは右手前腕内側部にIESを呈示することにより記録した.pSEPsはcontrol条件,伸縮性テープ条件,非伸縮性テープ条件の3条件のもと9電極で記録された.被験者は,control条件ではリクライニングチェアにリラックスした状態で座った.一方,伸縮性テープ条件ではテープに張力を加え前腕内側部にテーピングを行い,非伸縮性テープ条件では張力を伴わずにテーピングを行った.被験者は痛みの程度をVisual Analog Scale (VAS)で各条件で評価した.
  • 結果:N2-P2の振幅値は伸縮性テープ条件および非伸縮性テープ条件において,control条件に比べ有意に低下した.VASは,伸縮性テープ条件においてその他の条件と比較して有意に最も低かった.さらに,N2-P2振幅値とVASの間には有意な相関関係を認めた.
  • 結論:本研究により,痛み誘発部位へのテーピングにより痛みの知覚とpSEPが減弱することが明らかになった.この鎮痛の作用機序は,伸縮性および非伸縮性テープ貼付によるdistraction効果と考えられる.また,VASが伸縮性テープ条件で最も低くなった要因として,伸縮性テープをテンションを伴い貼付することにより生じる様々な感覚入力が,より効果的に痛みの知覚を減らしているかもしれない.