非利き手より利き手,親指より人差し指の方が,運動中に脳で感覚情報を処理する時間が短い(研究成果報告)

研究成果の概要 ; 本研究成果は,2016年6月23日にJournal of Motor Behavior(米国)誌に受理されました.

筋力を一定に保つという運動中に感覚刺激を行った時,この情報は脳の感覚野から運動野を経由して,運動を行う筋に戻ってきます.この時の皮質中継時間は右利き,左利きにかかわらず利き手で短いこと,また,同じ手では人差し指(示指)の方が親指(母指)より短いことを明らかにしました.

 

研究者からのコメント

1)   利き手とは「日常好んでよく使う手」と定義され,生前にほぼ決まり,幼児期に定着するといわれています.今回は大がかりな脳機能イメージング装置を使わなくても,皮質中継時間の比較により,非利き手と比べて利き手では運動中に感覚情報を効率よく処理している可能性を示すことができました.

2)   食事で使う箸や,コンピュータのマウスを操作する時,母指はあまり動かずに道具を固定し,示指はその道具を動かす,というように役割分担をしています.示指と比 較して母指の皮質中継時間が長いということは,母指では筋がどのように動いているのか?という情報をより多く必要としていることをあらわし,その結果,腕や体全体が動いても対象物を巧みに固定しているのかも知れません.一方,示指は,あまりその時の感覚情報を必要とせず,予めプログラムされた通りに動いているのかも知れません(フィードフォワード制御).

 

本研究成果のポイント

1) 22名の健常成人被験者(右利き16名,左利き6名)に,利き手及び非利き手の母指と示指でそれぞれ最大筋力の10%の力を保ってもらいました.この時に感覚刺激と磁気刺激を行い,長潜時反射の時間から,感覚情報の上行時間と,運動指令の下行時間を差し引き,皮質中継時間を算出しました.

2)  図2は右利き被験者の母指(APB)と示指(FDI)の筋活動,脳波の記録例です.感覚情報の上行時間(AT)と運動指令の下行時間(ET)は,ほぼ同じですが,示指の皮質中継時間(CRT)が短いことにより,両者の長潜時反射(LLR)時間に差が出ていることが観察されます.

3) 図3は全被験者の平均値の比較です.皮質中継時間は右利き,左利きにかかわらず利き手で短いこと,また,同じ手では人差し指(示指)の方が親指(母指)より短いという結果になりました.

4) 手のリハビリテーションを行う時,障害側と健常側で皮質中継時間を比較することにより,障害された手の感覚運動機能が回復する過程を,簡易な脳科学的手法で評価できる可能性があります.


原論文情報

Hikari Kirimoto, Hiroyuki Tamaki, Hideaki Onishi. Difference in cortical relay time between intrinsic and between homonymous muscles of dominant and non-dominant hands. Journal of Motor Behavior, 2016 (in publishing).