10/17 日本臨床神経生理学会予演会

【日本臨床神経生理学会予演会】

担当:桐本

タイトル:視標追跡描円課題における両側半球tDCSと従来型片側半球tDCS効果の比較

  • 目的:非利き手による視標追跡描円課題の精度における改善効果は,従来型片側半球tDCSより,近年注目されている両側半球tDCSの方が優れているのか否かを検証した.
  • 方法:14名の右利き健常成人被験者がtDCS前後に非利き手である左手で視標追跡描円課題を行い,その前後の課題遂行精度を比較した.tDCSは,右M1陽極-左M1陰極刺激(Dual-tDCS),右M1陽極-左前額部陰極刺激(Single-tDCS),Sham-tDCSの3条件とした.
  • 結果:逸脱した運動の指標であるX,Y,Z方向の加速度スペクトル和はSingle-tDCS条件においてのみ,それぞれ有意に減少した.
  • 考察:シークエンス・タッピング課題や二点弁別課題におけるDual-tDCSの優位性を示す先行研究とは異なる結果を示した.視覚刺激処理過程を含む上肢巧緻動作の精度向上には,必ずしもDual-tDCSが優れているとは限らないことが示唆された.

 

担当:犬飼

タイトル:皮質脊髄路興奮性を誘導する最適な経頭蓋電流刺激法の検証

  • 目的:経頭蓋直流電流刺激(tDCS),経頭蓋交流電流刺激(tACS),経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)は刺激条件により,皮質脊髄路興奮性を高めることができる.本研究目的は,皮質脊髄路興奮性を高める最適な経頭蓋電流刺激法を検証するである.
  • 方法:健常若年者15名を対象に,1)tDCS(陽極刺激),2)tACS(140Hz),3)tRNS(0.1―640Hz),4)Sham刺激の4条件をランダムに実施した.いずれの刺激も刺激強度は1mAにて10分間行った.皮質脊髄路興奮性の指標は運動誘発電位(MEP)を用い,右第一背側骨間筋より記録した.磁気刺激の強度は安静時に1mVのMEPを誘発される強度とし,介入前,介入直後,介入終了5分,10分,20分後に記録を行った.
  • 結果:MEP振幅値はtRNS後に介入前と比べて介入直後から20分後まで,Sham刺激と比べて介入直後から20分後まで有意に増加した.
  • 結論:tRNSはtDCS,tACSに比べて,安定して皮質脊髄路興奮性増加を誘導できることが示唆された.

 

担当:小島

タイトル:機械的触覚刺激による刺激方法の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響

  • 目的:機械的触覚刺激による刺激方法の違いが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人10名であった.機械的触覚刺激には点字様の刺激ピンを24本(6ピン×4ピン)使用し,刺激部位は右示指の指腹とした.刺激方法は2条件とし,刺激ピンが示指の長軸方向に前後移動する条件(縦刺激条件)と刺激ピン列がランダムに変化する条件(ランダム条件)とした.なお,各刺激による介入は20分間(on / off:1秒 / 5秒)とした.皮質脊髄路の興奮性の指標(運動誘発電位:MEP)は介入前,介入直後から20分後(5分間隔)まで記録した(記録筋:右第一背側骨間筋).
  • 結果:縦刺激条件では介入5分後にMEP振幅値の有意な増大が認められた(P < 0.05).一方,ランダム刺激条件では有意な変化は認められなかった.
  • 結論:皮質脊髄路の興奮性は機械的触覚刺激の刺激方法に依存して変動することが示唆された.

 

担当:立木

タイトル:経頭蓋陰極直流電流刺激と末梢神経電気刺激の組み合わせが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響

  • 目的:本研究の目的は,経頭蓋陰極直流電流刺激(tDCS)と末梢神経電気刺激(PES)の組み合わせが皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすること.
  • 方法:対象は同意の得られた健常成人8名であった.介入はtDCS,PES,tDCSとPESを併用する3条件とした.tDCSは陰極を左一次運動野,陽極を右眼窩上へ貼付し,1 mAで10分間の刺激を行った.PESは80%運動閾値強度にて右尺骨神経に150 Hzの刺激頻度で30分施行した.皮質脊髄路の興奮性評価は介入前2回と介入後2,5,10,20分で行い,経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(MEP)を各15波形計測した.
  • 結果:tDCS条件では介入前に対し介入後2,5,10分でMEP振幅の有意な低下が認められ,PES条件では介入後2,5分でMEP振幅の有意な低下が認められた(p<0.05).一方,tDCSとPESの併用条件ではMEP振幅の有意な変化が認められなかった(p>0.05).
  • 結論:皮質脊髄路の興奮性は陰極tDCS後とPES後に有意な低下を認めたが,併用条件では有意な変化を認ないことが明らかになった.

 

担当:宮口

タイトル:軽負荷反復運動によるPost-exercise depressionが一次運動野の可塑的変化に及ぼす影響

  • 目的:軽負荷反復運動によるPost-exercise depression(PED)が一次運動野の可塑的変化に及ぼす影響を明らかにすること.
  • 方法:対象は同意の得られた健常成人8名であった.一次運動野の興奮性増大を促すために尺骨神経に対し200 Hzの末梢神経電気刺激(ES)を10秒間実施した.PED誘発運動課題は2 Hzの右示指外転運動とし,最大随意収縮の20 %強度にて2分間行った.介入条件は,ES単独条件(条件1)および反復運動後のPED期間中にESを実施する条件(条件2)とした.介入前後に経頭蓋磁気刺激を用いて左一次運動野領域を刺激し,右第一背側骨間筋から運動誘発電位(MEP)を計測した.
  • 結果:条件1において介入後MEP振幅の有意な増大が認められた.条件2においては運動課題後にPEDが認められたものの,ES介入後のMEP振幅の増大は認められなかった.
  • 結論:軽負荷反復運動によるPEDは一次運動野の可塑的変化に影響を及ぼさないことが示唆された

 

担当:佐々木

タイトル:反復的他動運動の運動頻度の違いが体性感覚誘発電位に与える影響

  • 目的:本研究の目的は,示指の反復的他動運動の運動頻度の違いが体性感覚誘発電位(SEP)に与える影響を明らかにすることであった.
  • 方法:対象は同意の得られた健常成人15名であった.反復的他動運動課題は10分間の反復示指外転運動とし,運動頻度は0.5,1.0,3.0,5.0 Hzの4条件とした.SEP波形は10-20法に基づいて頭皮上のC3’を記録電極,Fzを基準電極として導出した.SEPを誘発するための末梢電気刺激は,右手関節部の尺骨神経に行い,運動閾値の110%強度で1.5 Hzの刺激頻度で刺激した.SEPは他動運動課題の介入前と介入終了後0分から24分までの4分毎に各360波形計測した.
  • 結果:3 Hz条件では介入終了後の0分から12分にかけてP50の有意な低下を認めたが(P < 0.05),0.5,1.0,5.0 Hz条件ではP50の有意な変化は認めなかった.さらに,全条件ではN20とP25には有意な変化は認められなかった.
  • 結論:SEPのP50成分は,10分間の3 Hz反復的他動運動後に低下することが明らかになった.

 

担当:中川昌

タイトル:他動運動時の関節角度および運動方向の違いが運動誘発電位に与える影響

  • 目的:他動運動時の関節角度および運動方向の違いが運動誘発電位(MEP)に与える影響を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は同意の得られた健常成人15名であった.示指他動運動は2条件に分け,条件1では運動範囲を外転10°から内転30°とし,内転運動時または外転運動時における内外転0°と内転20°位でMEP,F波,M波を計測した.条件2では運動範囲を内転10°から30°とし,内転運動時の内転20°でMEPを計測した.MEPとF波,M波はそれぞれ経頭蓋磁気刺激と末梢電気刺激を用いて右第一背側骨間筋から記録した.
  • 結果:条件1では内転運動時の内外転0°でのみMEP 振幅値が増大したが,条件2では内転20°位でMEP振幅値が有意に増大した. F波,F/M比はいずれの条件においても変化しなかった.
  • 結論:他動運動時のMEP振幅値は,他動運動の方向や関節角度に影響されるのではなく,他動運動開始からの時間に応じて変化している可能性が考えられた.