5/7 勉強会

【研究報告】

担当:中野

タイトル:有酸素性運動が空間記憶トレーニングに及ぼす影響

  • 目的:認知トレーニングが認知機能を高める手立てとして有効であるか否かについては,未だ議論の最中である.神経可塑性は事前の神経活動によって変化するというメタ可塑性の理論を応用し,認知トレーニングの効果を促進するための運動プレコンディショニング法を検討した.リカンベントエルゴメーターを用いた運動が、α、β帯域の活動を増大させ、空間記憶トレーニングのプレコンディショニングとして有用となるかを明らかにすること。
  • 方法:実験1:健常成人15名を対象に運動条件と安静条件の2試技を実施し、介入前および介入10、15、30分後に脳波の計測を行った。実験2:健常成人30名を運動群、安静群各15名とし、介入後に約2分間の空間記憶課題10セットをトレーニングとして行い、トレーニング15、30、45、60分後、1日後に再度同課題を行った。実験1,2共に運動は50%Vo2peakで20分間のペダリング運動とした。覚醒度の評価も同時に行った。
  • 結果:実験1:運動後10分まで、α、β活動の増大が認められた。実験2:運動条件においてトレーニング効果の促進が認められた。運動後に覚醒度の上昇が見られた。
  • 結論:中等度有酸素性運動が空間記憶トレーニングの効果を促進させた。これには、運動後のαおよびβ活動の増大、覚醒度の上昇が関与している可能性が示唆された。

 

【文献抄読】

担当:宮口

タイトル:Surround inhibition in the primary motor cortex is task-specifically modulated in non-professional musicians but not in healthy controls during real piano playing

出典:Márquez et al. Neuroscience 2018;373:106-112.

  • 目的:運動課題の違い(単独の指運動と3本指運動)および運動経験の違い(ミュージシャンおよびコントロール群)によってSurround inhibitionがどのように変化するか明らかにすること
  • 方法:対象はコントロール群10名,ミュージシャン群9名であった.TMSを用いて,単独の指運動および3本の指運動遂行時の運動準備期および運動直後のSurround inhibitionを評価した.対象筋は,第一背側骨間筋,母指対立筋,小指外転筋であった.
  • 結果:ミュージシャン群では,3本の指を協調的に運動させる際に,運動準備期のSurround inhibitionが有意に小さかった.コントロール群では,単独の指運動および3本の指運動遂行時のSurround inhibitionは同程度であった.
  • 結論:ミュージシャンは,手指の協調的な運動を遂行する際にSurround inhibitionの程度が小さいことが明らかになった.