5/21 勉強会

【研究報告】

担当:山﨑

タイトル:一過性の低強度有酸素性運動が一次運動野の皮質内機能に与える影響

  • 目的:一過性の低強度ペダリング運動によって一次運動野(M1)上肢及び下肢領域の皮質内機能が変調するか否か明らかにすること
  • 方法:健常成人15名を対象にM1上肢領域の計測を行う実験1とM1下肢領域の計測を行う実験2を実施した.さらに各実験は、抑制機能を評価する実験と興奮機能を評価する実験に分けて実施し、運動試技と安静試技の2条件を行った.実験3として上肢・下肢の脊髄興奮性を評価した.運動は30%VO2peakで30分間のペダリング運動とした.抑制機能はSICI、SAI、LICIにより評価し、興奮機能はICF、SICFにより評価した.
  • 結果:ペダリング運動後にM1上肢、下肢領域のSICI、SAIが減弱した.さらにM1上肢領域ではICFも減弱した.その他のパラメータや脊髄興奮性については変化が見られなかった.
  • 結論:30分の低強度ペダリング運動によってM1上肢及び下肢領域の皮質内機能が変調することが示された.一方、脊髄興奮性には影響を与えないことが確認された.

 

【文献抄読】

担当:玉越

タイトル:Environmental enrichment cognitive neuroprotection in an experimental model of cerebral ischemia: biochemical and molecular aspects.

出典:Gonçalves et al. Behav Brain Res. 2018;348:171-183.

  • 目的:本研究は脳梗塞発症前における豊かな環境での飼育が発症後の認知機能低下や海馬の機能に与える影響について検証することを目的とした.
  • 方法:実験動物にはC57Bl/6 miceを使用した.実験モデルには両側総頚動脈閉塞モデルを用いた.実験群にはSHAM+標準ケージ飼育・SHAM+豊かな環境飼育・脳虚血+標準ケージ飼育・脳虚血+豊かな環境飼育の4群を設けた.認知機能評価として新規物体認知課題とY-mazeを実施し,短期・長期記憶,作業記憶を評価した.評価後に脳組織を採取し、海馬の解析を行った.織学的評価として梗塞体積を解析した. Alpha7,GFAP,GluN1,GluN2A,GluN2B,GluN2C,IL-1b,M1のmRNA発現量をリアルタイムPCR法で解析した.グルタミン酸濃度をELISA法で解析した.
  • 結果:発症前に豊かな環境飼育を行った群は短期記憶が改善し,梗塞体積が減少していた.短期記憶評価日において,GFAPmRNA発現量が有意に増加した.また,IL-1bmRNA発現量が有意に減少した.
  • 考察:本研究から発症前の豊かな環境での飼育は,アストロサイトが関与した炎症因子の発現抑制によって認知機能障害を改善させることが分かった.