7/1 勉強会

【研究報告】

担当:堀田

タイトル:骨格筋微小循環の調節機構の解明に向けて

  • 目的:ストレッチングが高齢ラット(研究1)および高齢末梢動脈疾患患者(研究2)の血管内皮機能に与える影響を検討した.
  • 方法:(研究1)高齢のFisher344ラット(雄性,月齢20ヵ月)の片側後肢の足関節を背屈位で保持するスプリントを作成し,30分/日,5日/週,4週間のストレッチングを実施した.4週間のストレッチングの後,ヒラメ筋1A細動脈を摘出し,カニュレーション処置を施し,内皮依存性血管拡張反応(ACh, 10-9-10-4)を測定した.細動脈の凍結切片を作成し,内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の一次抗体で免疫染色した.また,麻酔下で上行大動脈にカテーテル留置を施し,ラットを覚醒させ十分な回復を確認した後に,トレッドミル歩行(15 m/分)中に放射性微粒子(54Co, 85Sr)を血管内に投与した.投与後にラットの下腿筋(ヒラメ筋, 足底筋, 長趾屈筋, 長母趾屈筋, 前脛骨筋, 長趾伸筋)を摘出し,ガンマカウンターで放射性微粒子を検出し,各筋の血流量を算出した.ヒラメ筋の凍結切片を作成し,Lectin,HIF-1α,VEGF-A, nNOSの一次抗体で免疫染色した.(研究2)動物実験で得られた結果が,ヒトでも再現されるか否かを検証するために,米国Tallahassee Memorial HealthCareに通院中の高齢末梢動脈疾患患者(71±2歳,ankle-brachial index 0.73±0.07)を対象に,動物実験で施行したプロトコルと同様のストレッチングを在宅で実施した.4週間の在宅ストレッチング後に超音波画像診断装置を用いて,膝窩動脈のflow-mediated dilation(FMD)を内皮機能の指標として測定した.また,6分間で歩行可能な最大距離(6分間歩行距離)を測定した.
  • 結果:(研究1)4週間のストレッチング後に,ストレッチしていない対照肢と比較してストレッチ肢でヒラメ筋細動脈の内皮依存性血管拡張反応が高値を示し,細動脈壁におけるeNOS発現が増加していた.安静時の筋血流は対照肢とストレッチ肢の間に差を認めなかったが,歩行時の底屈筋群(ヒラメ筋,足底筋,長趾屈筋, 長母趾屈筋)の血流は対照肢と比較しストレッチ肢で有意に高値を示した.骨格筋免疫染色の結果,対照肢と比べて骨格筋におけるcapillary-fiber ratio,HIF-1αおよびVEGF-A発現は有意に高値を示したが,nNOSは差を認めなかった.(研究2)研究2で対象となった高齢末梢動脈疾患患者は全例歩行時に症状を有していた.4週間のストレッチング後に,膝窩動脈の内皮依存性血管拡張反応は増加し,6分間歩行距離が有意に延長した.
  • 結論:ストレッチングは高齢者の骨格筋微小血管機能の改善を介して,歩行能力を改善する可能性が示された.
  • 本研究はJournal of Physiology 2018 (PMID: 29623692),Cardiovascular Revascularization Medicine 2019 (PMID: 31171470)に掲載済みの内容である.

 

【文献抄読】

担当:玉越

タイトル:Constraint induced movement therapy promotes contralesional-oriented structural and bihemispheric functional neuroplasticity after stroke.

出典:Liu et al. Brain Res Bull. 2019;150:201-206.

  • 目的:本研究は左中大脳動脈閉塞モデルラットを用いてCIMTによる中枢神経系の構造的・機能的再編成について検証した.
  • 対象・方法:実験動物にはSD雄性ラットを用いた.カニューレを用いて左中大脳動脈を一時的に閉塞し,左中大脳動脈閉塞再潅流モデルラットを作製した.CIMTの介入は,手術8日目から8週間まで非麻痺側上肢をフェルトで固定して行った.運動機能評価にはHorizontal ladder testを用いた.狂犬病ウィルス神経トレーサーを用いて軸索再編成の解析を行った.また,運動野におけるSynapsin-1をシナプス数の指標として解析した.さらに,c-fosを用いて運動野における神経活動について検証した.
  • 結果:CIMTは運動機能回復を促進し、傷害側運動野・赤核よりも非傷害側運動野・赤核の神経回路再編成を促した.また,シナプス数は非傷害側運動野で,c-fos陽性細胞数は両側運動野で増加が認められた.
  • 結論:CIMTによる運動機能回復の促進には傷害側運動野・赤核より非傷害側運動野・赤核が重要な役割を担っている可能性がある.しかし,CIMTは両側運動野の神経活動を活性化する.