10/21 勉強会

【文献抄読】

担当:菊元

タイトル:Hop tests can result in higher limb symmetry index values than isokinetic strength and leg press tests in patients following ACL reconstruction

出典:Nagai et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2019. doi: 10.1007/s00167-019-05513-3.

  • 目的:大腿四頭筋の筋出力低下は,前十字靭帯損傷および再建手術(ACLR)後における一般的な臨床所見である.本研究の目的は,3つの異なる機能評価バッテリーである等速性膝関節伸展トルクのピーク値とホップテスト,またレッグプレスの各筋力評価と左右対称性(LSI)を比較することとした.
  • 方法:ACLR(術後平均8.3ヶ月)の既往を有する計26名を対象に,3種類の機能評価バッテリーによる筋力評価と左右対称性を検証した.等速性筋力は,60/180/300 deg/secの各角速度による伸展筋力ピーク値を,ホップテストはシングルホップ(SH)およびトリプルホップ(TH)の跳躍距離を計測した.加えて,片側最大脚力(POWER)として片脚でのレッグプレスを計測した.LSIは、非損傷側に対する損傷側の比率として算出した.ピアソン相関係数と対応するt検定を使用し,各評価バッテリー間の相関関係を検証した.また,被験者内の一元配置分散分析により,各評価バッテリー間でのLSI値の比較を行った.
  • 結果:各角速度での等速性膝関節伸展トルクのピーク値は,両ホップテストの跳躍距離およびPOWER値と間に有意に正の相関があったが(P <0.05),両ホップテストの跳躍距離とPOWER値の間には有意な相関関係は認められなかった.全ての評価バッテリーにおいて,LSI値に有意な差が認められた(P = 0.001-0.008).また,SHにおけるLSI値は,60deg/secでの等速性膝関節伸展トルクのピーク値のLSI値よりも著しく有意に高値となり,同様に,THにおけるLSI値は,60と180deg/secの等速性膝関節伸展トルクのピーク値およびPOWER値のLSI値に比して高値を示した.
  • 結論:等速性膝関節伸展トルクのピーク値は、両ホップテストの跳躍距離およびPOWER値と間に有意に正の相関が認められた.しかしながら,両ホップテストでは等速性による筋力評価バッテリーよりも大幅に高いLSI値が示されているため,LSI値は注意して解釈する必要がある.現在の「ゴールデンスタンダード」である60deg/secの等速性膝関節伸展トルクのピーク値は,全ての評価バッテリーの中で最も低いLSI値を示した.従って本研究では,ACLR後の競技復帰基準の評価バッテリーとして,等速性膝関節伸展トルクのピーク値を継続して使用することがサポートされた.
  • 自身の研究との関連:ACLR後のACL再損傷が大きな社会問題になっている昨今で,競技復帰基準の再選定が急務となっている.このような現状から,「ゴールデンスタンダード」である60deg/secの等速性膝関節伸展トルクのピーク値を改めて検証し直し,再損傷率を少しでも低値に抑えたいと考えている.