1/20 勉強会

【研究報告】

担当:太田

タイトル:骨格筋支配神経における「非活動性侵害受容器」に関する研究

  • 目的:「非活動性侵害受容器」は正常時では機械非感受性であるが,病態時に活性化し痛覚過敏の末梢神経機構に寄与すると考えられている.しかし,骨格筋では実証されておらず,その活性化因子や機構も未解明である.また,骨格筋の交感神経は運動時の血流反応に重要な役割を果たすと考えられるが,その割合や詳細な電気生理学的特性は未解明である.そこで本研究は,骨格筋の「非活動性侵害受容器」や交感神経を同定し,それらの電気生理学的特徴を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:雄性SDラットを用い,ペントバルビタール麻酔下で血圧,心拍,直腸温を生理的範囲に保持し,in vivo単一神経記録法により腓腹筋神経からC線維を同定した.次に,同定したC線維軸索への反復電気刺激 (5 Hz,10秒間) により活動依存的伝導速度変化 (ADCCV) を記録した.また,腓腹筋へのピンチ刺激により線維の機械感受性の有無を調べた.さらに,「非活動性侵害受容器」と考えられた一部の線維に対して炎症メディエータの混合物 (炎症スープ) を筋注し,新たに機械感受性を獲得するか調べた.また,腓腹筋支配神経のうち交感神経の割合や軸索伝導特性を調べるため,腰部交感神経幹を遠心性に電気刺激し,腓腹筋神経束からADCCVを記録した.
  • 結果:同定した腓腹筋C線維 (197例) のうち,機械非感受性線維は153例であった.このうち17例 (C線維の約9%)のADCCVは顕著に遅延し (-10%以下) ,「非活動性侵害受容器」であると考えられた.さらに,この17例のうち9例の腓腹筋に炎症スープを投与したところ,3例は投与3~10分後に新たに機械感受性を示した.一方,腰部交感神経幹の遠心性刺激により同定した腓腹筋交感神経 (22例) のADCCV遅延は約-2.1%と小さかったため,腓腹筋神経で同定された機械非感受性線維 (153例) のうちADCCV遅延度の小さい線維の多くは交感神経であると考えられた.
  • 結論:骨格筋における「非活動性侵害受容器」の存在を実証し,その一部が実験的炎症により活性化し,新たに機械感受性を獲得することを示した.また,腓腹筋に分布する交感神経の電気生理学的特性が明らかとなった.