7/12 勉強会

【研究報告】

担当:関根

タイトル:重量物挙上動作時の体幹筋活動解析

  • 目的:質量予測不一致による重量物挙上動作における体幹筋活動を明らかにすること,体幹筋エクササイズの即時効果を検証することを本研究の目的とした.
  • 方法:健常男子大学生11名を対象とし,台上からの重量物持ち上げ動作を実施した.課題試技は,重量物の質量と被験者が予測している質量が一致している「予測条件」,重量物の質量と被験者が予測している質量が異なる「予測不一致条件」,体幹筋エクササイズの効果を検証する「介入後条件」とした.被験筋は右側の腹直筋,内腹斜筋,外腹斜筋,脊柱起立筋,大殿筋,大腿二頭筋,大腿直筋,上腕二頭筋とした.重量物挙上動作を5期に分け,各期におけるRoot Mean Square(RMS)を算出し,最大随意収縮(MVC)時のRMSで正規化した(%MVC).試技条件と期を因子とした二元配置分散分析により各筋の筋活動量を比較した.
  • 結果:予測条件(10kgの重量物を10kgと予測)に比べ,予測不一致条件(10kgの重量物を5kgと予測)では,持ち上げ動作初期における脊柱起立筋の筋活動量が有意に大きかった.体幹筋エクササイズの介入後に行う介入後条件では,介入前に比べ,上腕二頭筋の筋活動量が有意に増加した.
  • 考察:予測している質量と異なる重さの物体を持ち上げる時には,質量の予測が出来ている時に比べ,脊柱起立筋の筋活動量が大きくなり,筋性の急性腰痛発症につながる可能性がある.

 

【文献抄読】

担当:高橋

タイトル:SLPI is a critical mediator that controls PTH-induced bone formation 

出典:Morimoto et al., NATURE COMMUNICATIONS | (2021) 12:2136 | https://doi.org/10.1038/s41467-021-22402-x

  • 目的:PTH間欠投与は,骨量を増加することで知られている.しかし,その機序については不明な点が多い.本研究では,mRNAシーケンスによる網羅的解析からSLPIを標的分子としてPTH間欠投与による骨量増加のメカニズム解明を行うことを目的とした.
  • 結果:WTマウスとSLPI-KOマウスのそれぞれに対し,PBSとPTHを投与した結果,SLPI-KOマウスPTH投与群は,WTマウスと比較して骨量・骨梁幅ならびに石灰加速度が有意に低値を示した.骨芽細胞に対しSLPIを過剰発現させた培養実験の結果,ALP,Alizarin redが有意に高値を示し,骨芽細胞分化の転写因子であるRUNX2や細胞増殖数なども有意に上昇した.次に,骨芽細胞と破骨細胞の関係ついて検証した結果,In Vitro条件,生体イメージングを用いたIn Vivo条件のいずれにおいても,SLPIが両細胞の遊走・接着を促す結果であった.このJuxtacrine条件で骨形成・骨吸収マーカーを検証した結果,骨芽細胞・破骨細胞の共局在下では,骨形成が促進され,骨吸収が抑制された.
  • 結論:PTH間欠投与によるSLPI上昇は,骨芽細胞の分化・増殖を誘導するだけでなく,骨芽細胞・破骨細胞の細胞間相互作用を増加することで骨形成と骨吸収の両面を制御していることが明らかとなった.