小脳へのランダムノイズ刺激は,小脳から対側一次運動野への経路を変調させる可能性

川上沙輝さん(医療福祉学専攻1年,神経生理Lab,運動機能医科学研究所)と犬飼康人准教授(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌『Journal of Clinical Neuroscience』に掲載されました!

研究内容の概要;
脳卒中後のリハビリテーションにおいて,効率的な運動学習を促す治療技術の開発は動作能力の回復を促進させる可能性があります.経頭蓋直流電流刺激 (tDCS) および経頭蓋ランダムノイズ刺激 (tRNS) は,脳の興奮性を非侵襲的に変調することが可能な手法であり,これまで小脳に対するtDCSが脳活動に及ぼす影響が検証されています.しかしながら,小脳に対するtRNSの効果は明らかにされていません.本研究では,小脳に対するtDCSおよびtRNSが小脳および一次運動野の興奮性に与える影響を検証しました.その結果,小脳へのtRNS後に小脳の興奮性が減弱した被験者ほど,対側一次運動野の興奮性が増大する関連性が認められました.本研究成果は,「Journal of Clinical Neuroscience」に掲載予定です.研究者からのコメント;本研究の社会的意義・位置付けの説明、将来的にどのように活用できるかを説明する(200字以内、写真付き)
本研究は,小脳に対するtRNSによって小脳から対側一次運動野への経路が変調する可能性を示唆しました.小脳は,運動課題を反復することでエラーが減少する運動学習において重要な役割を果たしています.今後は,小脳へのtRNSが運動学習を向上させるかについて検証することで,リハビリテーションへ応用できる手法としての確立を目指します.本研究成果のポイント;箇条書き+図(わかりやすいもの)
①小脳に対する電気刺激の種類と強度の違いが,小脳興奮性 (CBI) および一次運動野興奮性 (MEP) に及ぼす影響を経頭蓋磁気刺激を用いて検討しました.

② 小脳へのtRNS介入後において,小脳興奮性が減少した被験者ほど対側一次運動野の興奮性が増大しました.

原論文情報;
Kawakami S, Inukai Y, Ikarashi H, Watanabe H, Miyaguchi S, Otsuru N, Onishi H. Transcranial direct current stimulation and transcranial random noise stimulation over the cerebellum differentially affect the cerebellum and primary motor cortex pathway. Journal of Clinical Neuroscience. 2022;100:59-65.
https://doi.org/10.1016/j.jocn.2022.04.003