6/27 勉強会

【研究報告】

担当:井上さん(M2)

タイトル:バーチャルリアリティを用いた内受容情報フィードバックは健常者における身体所有感を高める

  • 背景:慢性疼痛は,治療法が確立しておらず,難治性の疾患であり,痛みに付随して様々な精神的・肉体的症状が出現する.近年,慢性疼痛患者の身体所有感(自分の身体を自分のものと感じる感覚)の異常が報告されており,疼痛部位における情報の優先度を低下させる身体無視症状を呈すると言われている.さらにそれは,慢性疼痛患者の症状の増悪につながっている可能性がある.身体所有感を変化させる手段として,内受容感覚に注目が集まっている.先行研究では,内受容情報を可視化し,バーチャルリアリティー(VR)上の手に付与することで,その手を自分のものだと認識すると報告されている.本研究では,VR上で自身の手に,自身の心拍情報を付与することで身体所有感がどのように変化するかを調べることとした.
  • 方法:身体無視症状を測定するためのTemporal order judgment (TOJ task)を用い,主観的同時点を計測することで,身体所有感の変化を測定する.具体的には,VRでの心拍フィードバック前,フィードバック中,フィードバック後でTOJ課題を行う.さらに,心拍に同期させることに意味があるのかを調べるために,心拍をフィードバックしない群,心拍同期群,心拍非同期の3群に分けて実験を行う.
  • 結果の仮説:(1) 心拍同期群で主観的同時点が,フィードバック側とは逆に移動する.(2) 心拍非同期群でも自身主観的同時点が,フィードバック側とは逆に移動する.(3) フィードバック中に主観的同時点が大きく移動し,フィードバック後でも効果が残存するが,フィードバック中よりも移動は小さい.と仮説を立てる。

【文献抄読】

担当:渡邉さん(D2)

タイトル:White matter volume loss drives cortical reshaping after thalamic infarcts

出典:Conrad et al., Neuroimage clin, 2022 doi: 10.1016/j.nicl.2022.102953

  • 目的:視床梗塞後に生ずる上記症状の回復の程度および脳構造の変化を検討する.
  • 方法:対象は一側の視床梗塞患者13名とした.脳画像は3T-MRI装置にてT1強調画像および拡散強調画像を撮像した.眼球運動症状は物体を追視した際の眼球運動の軌跡(以下サッケード)を詳細に評価した.前庭機能障害は前庭動眼反射,視覚的垂直軸(以下SVV)を評価した.体性感覚機能評価は感覚障害の有無によって評価した.上記評価項目を発症直後(M0)に評価し,その後約6ヶ月後(M6)に再評価した.脳画像解析はVoxel-Based MorphometryとSurface-Based Morphometryの二つの方法を用いて解析した.
  • 結果:眼球運動障害はM0時点で6/13名に認められ,M6時点では前例が良好な機能回復を示した.前庭機能障害も同様にM0時点で6/13名に認められ,M6時点では前例が良好な機能回復を示した.体性感覚機能障害はM0時点で7/13名,M6時点で6/13名に認められており,機能回復は不良であった.脳構造の変化に関して,灰白質容積は6ヶ月前後で有意な変化は認められなかったものの,視床―感覚関連領域,視床―前庭頭頂島皮質への白質線維の大幅な減少が認められた.またこれらの白質線維の投射先である皮質領域の形態学的変化も認められた.
  • 結論:一側の視床梗塞後,白質容積の減少に伴う皮質の変形をもたらすが,灰白質容積は変化しなかった.関連する眼球運動および前庭症状は時間の経過とともに補償された.