8/1勉強会

【研究報告】

担当:宮口先生

タイトル:補足運動野への経頭蓋交流電流刺激が運動学習に与える効果

  • 目的:補足運動野(SMA)への経頭蓋交流電流刺激(tACS)が運動学習に与える効果を明らかにすること.
  • 方法:対象は右利き健常成人42名(20.6±0.5歳)とした.運動課題には右示指による視覚追従課題を使用し,1trialを1分間としてtACS介入前に10trial(T1-T10),tACS介入後に再度10trial(T11-T20)遂行した.tACSは導電性ゴム電極をSMA直上(Czの3.0 cm前方)と左肩部に貼付し,1.0 mAにて15分間施行した.刺激周波数は70 Hz(γ帯域)と20 Hz(β帯域)を用いた.刺激条件は,γ条件,β条件,sham条件の3条件とした.各条件に14名ずつ参加した.視覚追従課題のエラー率は,目標値と実測値の絶対誤差の平均値を最大張力で正規化することで算出した.また視覚追従課題のエラー率を用いて学習率(T1/T10)と再学習率(T11/T20)を算出した.
  • 結果:混合要因における分散分析の結果,学習率と再学習率の値に有意差は認められなかった.またγ条件のみ,学習率と再学習率との間に有意な正の相関が認められた(r=0.772,p<0.0001).
  • 結論:SMAへのtACS介入は,学習率の高い被験者の再学習率を向上させる可能性が示唆された.

【文献抄読】

担当:下門先生

タイトル:Multi-animal pose estimation, identification and tracking with DeepLabCut

出典:Lauer et al., Nat Methods, 2022 doi: 10.1038/s41592-022-01443-0

  • 背景:計測・通信技術の発展で動物研究が盛んに行われており,特にコンピュータビジョンの発達で動物の姿勢推定が容易に行えるようになった.しかし多動物環境は,まだ難しい.
  • 目的:多動物環境におけるコンピュータビジョンを用いた姿勢推定,個体識別,追跡が行えるシステムの性能テストを行う.
  • 方法:4種類の動物(3匹のネズミ,2匹を子育て中の親,2匹のマーモセット,14匹のイワシ)データセットを用いて,DLCRNet(DeepLabCutをベースにResNetとEfficientNetsを組み込んだ構造体)で身体点抽出,個別認識,追跡を行った.
  • 結果:画像データを基に推定した結果は,93.6±6.9%を予測でき,マーモセットの個体識別の正確性も95%だった.独自に開発したStiching法を用い,追跡中に見逃した個体を再追跡することができた.この方法を用いて,マーモセットの社会性分析も行うことができた.
  • 結論:多動物環境での姿勢推定,個体認識,追跡は他の手法と比較しても本システムの能力は優れており,現代において最新システムといえる.