9/12 勉強会

【研究報告】

担当:越智先生

タイトル:認知疲労に運動時換気応答が関わるか:漸増負荷運動による検討

  • 背景:漸増負荷運動は短時間で運動継続ができなくなる疲労運動条件として用いられるが,漸増負荷運動が実行機能に与える影響は不明である.最大運動時の換気応答 (低換気応答による酸素取込不足 or 過換気に伴う低炭酸ガス血漿による脳血管収縮) が認知疲労発現に関与する可能性が考えられる.
  • 目的:漸増負荷運動が実行機能に与える影響と,それに関わる呼気ガス指標の探索を目的とした.
  • 方法:ペダル回転数を維持できなくなるまで漸増負荷運動試験 (男性20W/分,女性15W/分で負荷が増加,ペダル回転数60回転/分と指示) を13名の若齢成人に課した.運動前後に実行機能課題であるサイモン課題を課した.サイモン課題は色と提示位置が一致する一致試行と一致しない不一致試行の2つの難易度で構成し,不一致試行と一致試行の反応時間を計測,試行間の反応時間の差をサイモン効果とし,実行機能の指標として解析した.
  • 結果:サイモン効果は運動前後で変化が見られなかった.サイモン効果の変化に関係する呼気ガス指標を探索したところ,換気量において負の相関関係が認められた.
  • 結論:漸増負荷運動は認知疲労を発現しなかったが,漸増負荷運動における最大運動時の低換気応答の被験者において,運動後に認知疲労が生じる可能性が示唆された.

【文献抄読】

担当:神居さん

タイトル:Proprioceptive Training with Visual Feedback Improves Upper Limb Function in Stroke Patients: A Pilot Study

出典:Jieying et al., Neural Plast. 2022. DOI 10.1155/2022/1588090

  • 背景と目的:関節位置覚練習が脳卒中患者の上肢運動機能に及ぼす影響に関しては,一致した見解が得られていない.そこで,本研究の目的を,視覚フィードバックを用いた両手関節位置覚練習が脳卒中患者の上肢運動機能に及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は脳卒中患者40名とし,関節位置覚練習群(20名),コントロール介入群(20名)に分けて実験を行った.関節位置覚練習群では,視覚フィードバックを用いた関節位置練習を4週間行った.コントロール介入群では,受動的な手指の屈伸運動を行った.介入4週間の前後で,上肢Fugel-Mayerの運動機能・感覚機能,ボックス移動テスト(BBT),バーサルインデックス(BI),親指探し試験(TLT)を実施した.
  • 結果:上肢Fugel-Mayer,BBT,TLTは関節位置覚練習群で,より大きな改善が認められた.BIは群で改善が認められた.
  • 結論:視覚フィードバックを用いた関節位置覚練習は脳卒中患者の上肢機能を効果的に改善させる事が示唆された.