10/17 勉強会

【研究報告】

担当:長坂先生

タイトル:ヒト脳電気刺激による神経活動変化の可視化

  • 背景・目的:小脳への経頭蓋交流電気刺激(tACS)が運動や痛みを変化させることが明らかとなっているが,どのような脳活動変化をもたらすのかについてはよく分かっていない.本研究では機能的磁気共鳴画像法(fMRI)の撮像中にtACSを施行し,どのような脳領域で活動が変動するのか検証した.
  • 方法:健常成人13名を対象とし行った(解析が終了した4名の結果を今回報告した).fMRI計測中に,70Hzまたは200HzのtACSを30秒間小脳に与えるブロックデザインによって,それぞれの刺激中での賦活部位を統計学的に算出した.
  • 結果:どちらの刺激によっても眼窩前頭皮質で活動上昇を示す有意なクラスターが検出された.また70Hz条件のみ前部帯状皮質などでも賦活が見られた.
  • 結論:小脳へのtACSは遠隔の脳部位にも影響を与えることを示唆した.

【文献抄読】

担当:志賀さん

タイトル:Offline low-frequency rTMS of the primary and premotor cortices does not impact motor sequence memory consolidation despite modulation of corticospinal excitability

出典:Psurek et al., scientific reports. 2021. DOI:10.1038/s41598-021-03737-3

  • 背景と目的:運動技能は,練習中と練習後(オフライン)の段階を交互に経て習得・改良される.この2つの学習段階は,運動前野と一次運動野を含む広範な運動学習ネットワーク内の動的な相互作用によって維持される.本研究では,運動記憶の定着における背側運動前野(dPMC)の役割と一次運動野(M1)との相互作用を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:健常成人48名(年齢22.1±3.1)が左のdPMCへの低周波(1Hz)反復経頭蓋磁気刺激(rTMS),左M1へのrTMS,偽rTMSの3群に割り付けられた.訓練前とrTMS後に運動誘発電位を記録し,刺激による皮質脊髄路興奮性の変化を評価した.参加者はオフライン時の運動記憶統合を評価するために,8時間後に運動系列のテストを再テストした.
  • 結果:dPMCへのrTMSは皮質脊髄路興奮性を有意に増加させ,M1へのrTMSは皮質脊髄路興奮性を有意に減少させたが,偽rTMSでは皮質脊髄路興奮性の変調は生じなかった.しかし,どの群も同様に有意なオフライン学習を示したことから,トレーニングの低周波rTMSの介入によって記憶の定着が促進されたわけではないことが示された.
  • 結論:明示的に獲得された運動スキルの統合は,トレーニング後の皮質脊髄路興奮性に依存しないことが示された.