過剰に痩せすぎない健康的な減量・脳内神経ペプチドによる食欲制御機構の解明に向けて


研究内容の概要:

脳の一部である視床下部では,神経ペプチドと呼ばれる比較的小さいタンパク質をやり取りし,神経細胞同士がコミュニケーションを取って食欲をコントロールしています.本研究では,栄養を欲している時にのみガラニンという神経ペプチドが,食欲を高めることを明らかにし,抗肥満薬の有用なターゲットとなる可能性を見出しました.



研究者からのコメント:

現在の日本で認可されている抗肥満薬はマジンドールという薬だけです.しかし,この薬は依存性・副作用が強い為,新たな抗肥満薬が求められていました.本研究の成果から,ガラニンシグナルに対する新たな抗肥満薬の創生が期待されます.

本研究成果のポイント:

①神経ペプチド・ガラニンは,夜間や絶食後の食欲が高まっているときには摂食を亢進し,昼間の食欲が少ない時には摂食を抑制する事が明らかとなった (注・マウスは夜行性なので,活動期が夜間です).

②摂食を制御するガラニンは,視床下部の中でも特に背内側の領域に存在していた.

③視床下部の他の領域にもガラニンは存在するが,室傍核に存在するガラニンは不安感を下げる働きが認められたものの,食欲には影響を与えなかった.

原論文情報:

Yuki Kambe, Trung Thanh Nguyen, Toshiharu Yasaka, Thi Thu Nguyen, Yoshimune Sameshima, Kohei Hashiguchi, Norihito Shintani, Hitoshi Hashimoto, Takashi Kurihara, Tatsuo Sato, Atsuro Miyata.

The pivotal role of neuropeptide crosstalk from ventromedial-PACAP to dorsomedial-galanin in the appetite regulation in the mouse hypothalamus. Molecular Neurobiology, doi:10.1007/s12035-022-03084-y