齋藤先生と新潟大学医学部の共同研究が国際誌に採択されました!


新潟大学医学部(分子病理学講座、呼吸器/感染症内科学講座)と本学 臨床技術学科の齋藤 憲先生の共同研究が,国際誌『FEBS Letters』に採択されました!


研究内容の概要:

OGFOD1は2-oxoglutarate and Fe (Ⅱ)-dependent oxygenaseファミリーに属するタンパク質であり,主に細胞核に局在します.しかしながら,非小細胞肺腺がんにおけるOGFOD1の標的分子および役割は不明です.そこでまず初めに,OGFOD1遺伝子knockdownによるがん抑制遺伝子および細胞周期関連分子の発現変化を網羅的に調べました.結果として,OGFOD1 knockdownは,がん抑制遺伝子p21Cip1の核内蓄積と細胞周期関連分子CDK1, CDK2, CCNB1のmRNAとタンパク質の両発現レベルを低下させ,細胞増殖抑制と細胞周期停止を誘導しました.さらに,mRNA半減期の解析により,OGFOD1 knockdownは,CDK2, CCNB1 mRNAの安定性には影響しませんが,CDK1 mRNAの安定性を低下させました.このCDK1 mRNAの安定性低下は,RNA結合因子HuRとCDK1 mRNAの結合性が損なわれるためであり,OGFOD1はHuRを調節するユニークな機能を持つことが示唆されました.
以上より,非小細胞肺腺がん細胞株におけるOGFOD1は,核内p21cip1の蓄積とCDK2, CCNB1の転写制御,HuRを介するCDK1 mRNAの安定化に関与することが明らかになまりました.

研究者からのコメント:

プロリン水酸化酵素OGFOD1は,近年,翻訳制御,ストレス顆粒形成,ヒストンメチル化,細胞周期・細胞増殖に関わる重要な制御分子であることが示唆されています.しかし,がん細胞におけるこれら多彩な現象の具体的機序の詳細は多くが不明です.
とくに増殖の活発な肺腺癌細胞はOGFOD1を豊富に発現しており,同分子のノックダウンは,顕著な増殖抑制,細胞周期停止を誘発し,この時多種類のCell Cycle Regulatorの中でも特異的に,p21Cip1の核内蓄積とその標的分子群CDK1, CDK2, CCNB1のmRNAとProteinレベル両者の著減が起こることが見出されました.
以上のことは,OGFOD1の多彩な機能の一端として,細胞増殖と周期に関連したp21Cip1, CDK2, CCNB1, CDK1およびHuRを巧妙に制御しがん細胞を増殖へ導く,これまでにない新規メカニズムを示したと考えられます.

原論文情報:

Fujisaki T, Saito K*, Kikuchi T, Kondo E. (*correspondence). The prolyl hydroxylase OGFOD1 promotes cancer cell proliferation by regulating the expression of cell cycle regulators. FEBS Lett. 2022 doi: 10.1002/1873-3468.14547.

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