2/27 勉強会

【研究報告】

担当:大野先生

タイトル:病理遺伝子診断時代の神経膠腫のためのMR画像バイオマーカーの開発と検証

  • 背景・目的:近年,神経膠腫(グリオーマ)の診断における遺伝子検査の重要性が報告されている.しかし,術前に遺伝子検査を行うためには侵襲的な生検術を実施し腫瘍細胞を採取する必要があるとともに,腫瘍内の不均一による誤診が問題とされている.無侵襲に高解像度で遺伝子変異に関連する腫瘍細胞の異常変化を捉えることができれば,高精度なグリオーマの診断および治療の最適化に繋がることが期待できる.無侵襲にグリオーマの遺伝子変異に関連する腫瘍細胞の変化を高解像度で捉えられる新規MR画像バイオマーカーを作成し,腫瘍組織内の不均一な遺伝子変異を反映した高精度なグリオーマ診断法を開発することを目的とする.
  • 方法・結果:1)既知濃度溶液を用い,撮像法および画像処理プログラムの最適化を行う.これまでに,既知濃度・pHのグルタミン酸およびグリシン溶液を用いた基礎実験において,CEST-MRIの撮像に成功している.しかし生体へこの手法を応用する場合,生体への温度上昇作用(SAR)を最小化する効率的パルスシークエンスの開発が必要となる.これを解決するために,撮像シークエンスの最適化(パルス形状や分割化の検討)を行う.1)で最適化した手法を用いて,2) ヒト脳測定への応用と最適化を行う.すでに健常成人を対象としたグルタミン酸濃度分布画像の作成に一部成功している.データを蓄積し,最終的には30人以上の健常症例データを取得し,MR画像バイオマーカーの正常値を得る.1),2)で最適化した手法を用いて疾患への応用を行い,3) MR画像バイオマーカーの作成,4) 摘出組織遺伝子変異との比較による妥当性検証を行い,遺伝子変異を反映したMR画像バイオマーカーの信頼性ある取得法の確立を目指す.
  • 今後の発展:MRIによる手法は病理組織検査と異なり,脳組織の採取が必要なく,生体に対し無侵襲な手法である.また,MRI撮像のみにより測定可能なため,将来の臨床応用に直結した研究である.さらに,MRIを用いた疾患特異的な診断・測定法開発のシードとなる可能性がある.

【文献抄読】

担当:菊地さん

タイトル:Tensor fascia latae and gluteal muscles myoelectric responses to increasing levels of hip medial rotation torque

出典:Martins et al., J Biomech. 2022 DOI:10.1016/j.jbiomech.2022.110944

  • 背景:股関節内旋は大腿筋膜張力(TFL)に,外旋は大殿筋群に起因するのが一般的である.しかしながら,実験動物を用いた研究では,TFLには内旋のモーメントアームがなく,股関節の屈曲角度によっては大殿筋が股関節内旋として機能することが報告されている.この矛盾を解決するために.股関節に加わる外的な内旋トルクを増加させたときのTFL,中殿筋,大殿筋の筋活動を計測した.
  • 方法:健常成人7名を対象に,股関節の前額面および矢状面のトルクを一定に保つことができる装置を用いて,外的な股関節内旋トルク発生させた.外的な股関節内旋トルクの大きさ,股関節屈曲角度(0°,45°,90°)を変化させた際のTFL,中殿筋,大殿筋の筋活動を計測し,各条件間での筋活動を比較した.
  • 結果:外的股関節内旋トルクを増加させた場合,90◦屈曲位ではTFL(+15%,p=0.002),伸展位では大殿筋上部線(+2%,p=0.048)の筋活動が増加した.中殿筋は,条件間における有意な筋活動の変化は認められなかった.
  • 結論:一般的な臨床上の考えとは対照的に,外的股関節内旋トルクの増加に抵抗するためには,TFLの筋活動増大が必要であることを示唆した.