3/6 勉強会

【研究報告】

担当:櫻井先生

タイトル:ASMR動画視聴がもたらす脳機能効果

  • 背景:autonomous sensory meridian response (ASMR) は若者の間で利用されている.利用の目的は,リラックス効果,睡眠導入,ストレス軽減,不安軽減である.ASMRとは視聴覚からの刺激によりうずく感覚のことでありポジティブな感情を導く.ASMRの聴覚刺激はトリガーの中で最も重要な役割を果たすと言われ,先行研究でもaudiovisual stimulationとauditory stimulationを利用したものが混在している.本研究は,直接audiovisual stimulationとauditory stimulationの効果の違いをfunctional magnetic resonance imaging (fMRI)を用いて脳機能から解明した初めての研究である.
  • 方法:対象者は20歳以上の健常者30名とし,ASMRのビデオを見ながらと音だけを聞きながら,脳機能をfunctional magnetic resonance imaging (fMRI) で撮像した.我々は,課題中の気分に関して「リラックスした気分」と「ゾワゾワした気分」のリッカート尺度に基づくアンケートを実施した.
  • 結果:audiovisual stimulationでは視覚野とauditory stimulationでは視覚野と聴覚野の部位で有意な賦活が認められた.さらに,それぞれ特徴的な部位の賦活が認められた.audiovisual stimulationに特有の賦活部位は中前頭回と左側坐核であり,auditory stimulationに特有の賦活部位は両側の島皮質であった.アンケートではaudiovisual stimulationとAuditory stimulationにおいて「リラックスした気分」と「ゾワゾワした気分」どちらも有意差は認められなかった.
  • 結論:audiovisual stimulationでは中脳辺縁系ドーパミン経路に関与しておりポジティブな感情を得られたと示唆された.Auditory stimulationでは両側の島皮質の賦活から交感神経バランスが整ったことが示唆された.彼らが感じる気分に差はなかったが,Audiovisual stimulationの方が直接的にポジティブな感情を得られる効果が期待できた.ASMRの動画視聴がより効果的であるが,時と場所に合った利用方法として音だけを聴くことでもリラクゼーション効果に有用であることが示唆された.

【文献抄読】

担当:渡邊さん

タイトル:Endothelial Piezo1 sustains muscle capillary density and contributes to physical activity

出典:Bartoli et al., J Clin Invest. 2022 DOI: 10.1172/JCI141775

  • 背景・目的:運動による効果は多くの研究で報告されているが,その効果を引き起こす最初のセンサーはいまだ不明であった.Piezo1は機械刺激受容器であり,血管内皮では血流により活性化する.そこで,本研究では身体活動に関連したPiezo1の役割を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:雄性C57BL/6Jマウスを被験動物とし,内皮細胞特異的にPiezo1を欠損させたモデルを作成した.対照群とPiezo1欠損群の2群をも用いて,身体活動量,骨格筋および毛細血管の構造的変化,それに関わる分子メカニズムについて検証した.
  • 結果:身体活動量は対照群と比較してPiezo1欠損群で有意に減少した.骨格筋の構造的変化は群間に差を認めなかったが,毛細血管密度はPiezo1欠損群で低値を示した.また,Piezo1欠損群では血管内皮のアポトーシスを誘導するTSP2が増加し,内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現量が低下した.
  • 結論:血管内皮におけるPiezo1は骨格筋の毛細血管密度および身体活動量を維持するために重要な分子であることが示唆された.