越智先生の論文が国際誌「Applied Psychophysiology and Biofeedback」に採択されました!


越智元太講師(健康スポーツ学科,スポーツ生理学Lab,運動機能医科学研究所)らの研究論文が,国際誌『Applied Psychophysiology and Biofeedback』に採択されました!


研究内容の概要:

アスリートは日々の激しいトレーニングに加え,メディアやソーシャルメディア上の世間からの目,学業や仕事といった競技以外の精神的負担など,様々なストレスにさらされています.こうした精神的・肉体的ストレスは,メンタルヘルスの低下を招き,パフォーマンス低下や,心身の健康問題にまでつながることから,アスリートのメンタルヘルス低下予防は我が国の競技力向上,スポーツ実施者増加における重要な課題と言えます.これまで,メンタルヘルス低下やストレスの評価法として,質問紙による心理的評価法が主に用いられてきましたが,素早く情報が得られる一方で,性別や性格,環境など個人差の影響を受けやすく,正確な診断は困難という課題も残されていました.この問題を解決すべく,心拍情報の1つである心拍変動 (心臓の鼓動の時間間隔の変動) に着目しました.心拍変動は,ストレスを受けると心拍変動値が低下することが知られている一方で,パフォーマンスやメンタルヘルスと関連するかは不明でした.そこで,同一選手を対象とした単一事例研究により,アスリート個人内のメンタルヘルスの変化と心拍変動が関係するか検証することにしました.本研究では,日本代表クラスのラート競技のエリート選手に対し,2021年1月から2022年7月までの20か月の間,1ヵ月ごとにメンタルヘルス指標 (抑うつ指標 (K6),Profile of Mood States 2nd Edition; POMS2の「活気-活力」「疲労-無気力」など) と起床時の仰臥位および立位の心拍情報の測定を,胸ストラップ型心拍センサーを用いておこない,3日間の平均値をその月の心拍数,心拍変動としました.実験の結果,起床時の仰臥位の心拍数,心拍変動,起立時の心拍数はメンタルヘルスとの間には弱い相関しか見られませんでしたが,起立時の心拍変動と抑うつ指標のK6,POMS2の「疲労-無気力」の間には中程度の負の関係性が見られ,起立時心拍変動がメンタルヘルス低下と関連することが明らかとなりました.

研究者からのコメント:

本研究からは,定期的な起床時心拍変動計測が,早期にメンタルヘルス低下を予測することを可能とする非侵襲的なバイオマーカーとして有用であることが示唆されました.今後,心理尺度と心拍情報によるコンディション測定を詳細なストレス要因測定と組み合わせることで,アスリート個々に合わせたメンタルヘルス対策開発につながることが期待されます.

本研究成果のポイント:

抑うつ指標として用いられるK6とPOMS2で評価した疲労感は,起床時立位姿勢で計測された心拍変動と中程度 (相関係数rが0.3〜0.7,もしくは-0.3~-0.7) の負の関係性が見られました.起床時立位心拍変動は,抑うつや疲労感といったメンタルヘルス指標と関連し,アスリートのメンタルヘルス低下を予測するバイオマーカーとなりうることが示唆されました.

原論文情報:

Matsuura Y, Ochi G: The Potential of Heart Rate Variability Monitoring for Mental Health Assessment in Top Wheel Gymnastics Athletes: A Single Case Design. Appl Psychophysiol Biofeedback. 2023 doi: 10.1007/s10484-023-09585-3. Online ahead of print.