二重課題歩行中の認知課題の負荷量の違いによる歩行制御の神経生理学変化を明らかにしました!


古川晃希さん(理学療法学科19期生、神経生理Lab、新潟県立柿崎病院勤務)と北谷亮輔助教(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)の研究論文が国際誌『Neuroscience Letters』に採択されました!


研究内容の概要:

日常生活の中では歩きながら話すなど二つの課題を同時に遂行する「二重課題」を行う機会が非常に多くあります.しかし,先行研究では歩行などの姿勢制御中に二重課題を行うと姿勢制御のパフォーマンスは様々に変化することが報告されており,認知課題の負荷量の違いが姿勢制御に与える影響は一貫しておらず,その神経生理学的な背景も明らかにされていませんでした.そこで,本研究では二重課題歩行中の認知課題の負荷量の違いによる歩行制御の変化とその神経生理学的背景を大脳皮質から筋への神経性入力の程度を反映する筋電図コヒーレンスという解析手法を用いて検討しました.
先行研究では二重課題中に姿勢制御のパフォーマンスが改善する原因として姿勢制御への意識的な制御が減少することで姿勢制御が効率化することが提案されていましたが,本研究の結果,若年健常者では二重課題歩行中に認知課題の負荷量が大きいと,歩行のばらつきを抑制する戦略として筋電図コヒーレンスを増大させている可能性が示唆されました.

研究者からのコメント:

二重課題能力は日常生活を送る上で重要な機能です.本研究は認知課題の負荷量の設定や二重課題による運動パフォーマンスが低下することの少ない若年健常者での検討など研究的制限もありますが,先行研究で提案されている神経生理学的背景と異なる機序を示唆する結果が得られました.本研究結果は,臨床において二重課題中の認知課題の負荷量の設定に注目するべきことを示唆しています.

本研究成果のポイント:

①二重課題中の認知課題の負荷量が大きいと歩行のばらつきが減少するが,外的な刺激に対する反応時間は大きく遅延する.

②二重課題中の認知課題の負荷量が大きいと負荷量が小さい時より前脛骨筋内コヒーレンスのピーク値が増加する.

原論文情報:

Kitatani R, Furukawa K, Sakaue D, Otsuru N, Onishi H. Influences of different cognitive loads on central common neural drives to the ankle muscles during dual-task walking. Neuroscience Letters. 2023 Mar 27;137214. doi: 10.1016/j.neulet.2023.137214.