3/13 勉強会

【研究報告】

担当:平林先生

タイトル:左右の咬合圧バランスが青斑核と脊髄興奮性に及ぼす影響

  • 目的:不均衡な咬合圧バランスが遠隔促通効果に及ぼす影響を検討することとした.
  • 方法:正常咬合者20名を対象に,咬合機能を評価した.咬合強度が強い側をHyper側,弱い側をHypo側とした.咬合条件はno-bite,contact,12.5・25・50%MVC,max条件の6条件とした.咬合中の評価項目は両側のH反射と瞳孔径を計測した.
  • 結果:咬合強度に伴い脊髄興奮性と青斑核の活性を認めた.また,Hyper側ではHypo側と比較して脊髄興奮性と青斑核の活性を認め,不均衡が生じることが明らかとなった.
  • 結論:本研究は,咬合による遠隔促通効果が生じ,咬合強度に伴い,遠隔促通効果が増大した結果,脊髄興奮性と青斑核の活性を認めた.また,左右の咬合圧の不均衡が,求心性入力である三叉神経入力にも不均衡を及ぼし,脊髄興奮性や青斑核にも不均衡が生じることを明らかにした.

【文献抄読】

担当:横田先生

タイトル:Vagus nerve stimulation increases stomach-brain coupling via a vagal afferent pathway

出典:Müller et al., Brain Stimul. 2022, DOI: 10.1016/j.brs.2022.08.019

  • 背景:生体におけるエネルギー恒常性には,消化器官と脳の間の迷走神経シグナルによって支えられている.これまでに胃の活動リズムと脳活動の位相が同期した胃ネットワークが確立されているが,その機能を変化させるツールはなかった.
  • 目的:脳への迷走神経求心性投射を非侵襲的に刺激することにより,胃-脳結合を即時的にに増加させることができるかどうかを評価する.
  • 方法: single-blind randomized crossover designにより,右耳甲介に対する経皮的迷走神経刺激(taVNS)の胃-脳結合への影響を検証した.
  • 結果:先行研究と同様に,taVNSは孤束核(NTS)と中脳における胃-脳結合を強化し,同時に脳全体の結合も強化させた.また,大脳皮質においては主に多感覚を統合するTransmodal領域においてこの結合の強化が生じ,その変化量は主観的な代謝状態の指標である空腹感の増加と正相関していた.
  • 結論: taVNSは,胃に誘発される報酬を伝達するNTS-中脳経路を介して胃-脳結合を強化させ,脳と身体の間のコミュニケーションが迷走神経シグナルによって効果的に調節されていることを示唆している.本実験で得られた知見は,新規の神経調節治療への道を開く可能性のある「胃ネットワークのリクルートメントを指揮する迷走神経求心線維の役割」を理解する上で有用であると考える.