7/10 勉強会

【研究報告】

担当:川上さん

タイトル:小脳への経頭蓋ランダムノイズ刺激が運動学習に及ぼす影響と刺激効果の生理学的機序の検討

  • 目的:小脳に対する経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)が運動学習に及ぼす影響を明らかにすること,効果機序を脳活動と瞳孔径評価によって検討すること.
  • 方法:34名の健常成人を,小脳tRNS群とSham群の2群に振り分けた.視覚追従課題を20施行行っている最中に,tRNSまたはSham刺激を実施した.課題前,前半後,後半後に小脳および一次運動野(M1)興奮性を評価した.また,課題中の瞳孔径を計測した.
  • 結果:小脳tRNS群は初期の運動学習を促進した.学習後において,M1興奮性が増大し,M1興奮性が増大した被験者ほど学習が阻害された.また,課題中瞳孔径の縮小が遅延した.
  • 結論:小脳に対するtRNSは初期段階にはポジティブな効果を示すが.後期段階にはネガティブな効果を示す可能性がある.

【文献抄読】

担当:長坂先生

タイトル:Induction of a torpor-like hypothermic and hypometabolic state in rodents by ultrasound

出典:Yang et al., Nat Metab, 2023, 5(5):789-803. DOI: 10.1038/s42255-023-00804-z

  • 目的:視床下部への超音波刺激は,本来冬眠をしないげっ歯類動物への冬眠様行動変化を引き起こすのか明らかにする.
  • 方法:マウスおよびラットの自由行動下において超音波刺激装置から視床下部へ刺激を行い,体温,深部温度,酸素摂取量や活動量などを評価した.また,刺激による視床下部の活動を組織学的および光遺伝学手法を用いて確認した.さらに,冬眠様代謝動態の分子学的機序を調べるために,シングルセルRNA-seq解析を行った.
  • 結果:3分間の介入刺激によって,その後30-40分程度持続する体温や深部温低下,活動量減少,酸素摂取量減少が確認された.C-Fos発現や光遺伝学的手法によって,超音波刺激による視床下部の細胞活性化が確認された.最後に,この反応に関わる分子として,Trepm2をコードする遺伝子が関与することが明らかになった.
  • 考察:超音波刺激によって視床下部のTrepm2発現細胞の活性化が生じ,冬眠様行動を誘発することが明らかになった.期から観察できることを示す.