11/13 勉強会

【研究報告】

担当:越智先生

タイトル:VR運動が実行機能に与える影響

  • 背景:一過性の運動は実行機能を高めるが,必ずしもその効果を受けることはできない.運動が実行機能を向上させる背景に,快気分誘発に関わる脳内カテコラミン作動生神経系の関与が考えられる.本研究ではカテコラミン作動生神経系活性に伴う快気分を誘発する運動環境としてVRの効果を検証する.
  • 目的:VR運動が実行機能に与える影響とその脳内機構を明らかにする.
  • 方法:23名の若齢成人に10分間の安静,中強度運動,VR装置を装着した中強度運動の3条件を課した.運動前後に実行機能課題であるN-Back課題をMRI内で実施させた.N-Back課題は赤色の図形を答えさせる0-Back,一つ前に提示された図形の色と一致するか答えさせる1-Back,三つ前に提示された図形の色と一致するか答えさせる3-Backで構成され,反応時間,正答率を評価した.
  • 結果:3-Back課題において,VR運動条件は有意な反応時間の短縮が生じた.運動条件では反応時間の変化が認められなかった.
  • 結論と展望:VR運動は実行機能を高めることが明らかとなり,運動効果を高める可能性が示唆された.今後はこの脳内機構の解明のため,fMRIデータの解析を進める.

【文献抄読】

担当:平賀さん

タイトル:Prior information enhances tactile representation in primary somatosensory cortexnsorimotor contributions to manual dexterity

出典:Thomson et al., eNeuro, 2017, 4(6):ENEURO.0262-17.2017. doi: 10.1523/ENEURO.0262-17.2017

  • 背景と目的:事前情報は後続の知覚や運動に影響を与えると報告されている.実際に事前情報を与えることで運動パフォーマンスが向上したと報告されている.この背景に,事前情報が脳活動を変調させている可能性がある.知覚された触覚刺激がなくても,触られているイメージや運動イメージを行うことで一次体性感覚野の活動が増加すると報告されている.しかし,事前情報が一次体性感覚野の活動にどのような影響を与え,その影響が後続のパフォーマンスと関連があるかは不明である.そのため,本研究の目的を事前情報が一次体性感覚野における振動触覚刺激の表現にどのような影響を与えるか検証することとした.
  • 方法:対象を右利き健常成人20名とした.実験内容は,左親指か左薬指のどちらに振動刺激が与えられたか識別する課題とし,振動刺激前に事前情報が与えられる場合と事前情報が与えられない場合の2つの条件が存在した.本研究では振動識別課題時の脳活動をfMRIより評価し,振動識別課題の正答率と脳活動の変化に関連があるかを調査した.
  • 結果:事前情報は後続の振動識別課題の正答率を向上させた.また,事前情報により指示された指の一次体性感覚野領域の活動が増加され,その活動と振動識別課題の正答率の間に正の相関関係が認められた.
  • 結論:事前情報により知覚された触覚刺激がなくても一次体性感覚野の活動を変調させ,この活動が課題の遂行と関連していた.